小説家・桜井鈴茂さんの連載エッセイ「サバーバン・ブルーズを蹴散らしながら」第2回をおおくりします。桜井さんのお住まいである東京郊外の朝――起床してから近所のベーカリー・カフェに到着するまでの時間――が描かれた初回に続き、そのベーカリー・カフェで働く顔馴染の女子店員さんの話から始まります。



文・写真=桜井鈴茂


 あたりまえと言えばあたりまえなのだが、前回の当エッセイにしたためた曇天の朝からは幾日もが過ぎ、本日は綿雲こそ浮かんでいるけれども晴天、季節は着実に進行し、うるわしき秋は完全に過去のものとなり、真新しい冬がやってきて――と思うが早いか年は暮れゆき、街はなんやかんやと騒がしくなり、世の人々も心なしか浮ついているように見え、それを鬱陶しいと思うぼくでさえちょっとは浮ついているのかもしれず、明るい緑色のジャージの上に紺色のキルティングジャケットなんかを羽織るようになり、洒落臭い格子柄のマフラーなんかも首に巻きつけ、ソックスも厚手のものを履くようになった。にもかかわらず、なんとなんと、ぼくは朝のベーカリー・カフェで、コーヒーを注文するところから、今回ぶんの描写を始めるつもりなのである。律儀な男でしょう?

 つーか、今回から読み始めてくださった読者の方には意味不明ですよね――簡単におさらいすると、前回は、朝起きて、顔洗って、ジャージに着替えて、家を出て、11分歩いて、駅前のベーカリー・カフェに到着したあたりで終わったのでした。自分でも驚きだが、たったそれだけの……時間でいうと20分ばかりの行動とその間の思案を記すのに、原稿用紙換算で12枚強を費やした、ということか。なんたる冗長さ。初回ということでちょっと張り切りすぎたかな……まあ、そんなことはさておき……

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