湯浅学さんの大著作集『大音海』の出版を目指し、そのイントロダクションとして湯浅さんの過去の原稿に書き下ろしの解説を加えて掲載しております「大音海の岸辺」。前回は90年代前半に書かれたラップ/ヒップホップ関連の原稿を再録しましたが、今回からは同時期に『ミュージック・マガジン』で毎月湯浅さんが担当していた「ラップ/ハウス」欄のレビューを4回に分けて一挙掲載していく予定です。まずは1991年10月から1992年7月までの10ヶ月分のレビューを3ページに渡ってお届けします。

クイーン・ラティファ『ネイチャー・オブ・ア・シスタ』



ラップ/ハウス レヴュー


文=湯浅学


※アルバムタイトルがアーティスト名と同名の作品、もしくは、コンピレーション作品はアーティスト名を省略。各レヴューの末尾の数字は10点満点中の点数。(V)=ヴィデオ作品


クイーン・ラティファ『ネイチャー・オブ・ア・シスタ』
 これほど自信と確信に満ちた堂々たる自己表現を見せている女性が他にいるだろうか。2作目のアルバムも、じっくりと練られた力作だ。オーソドックスなラッピンが、さりげなく多彩に変化する様は実にスリリング。ラガマフィンと歌が多めになっている。重厚でしなやかなバック・トラックは文句なしに素晴らしい、女王の風格というものか。(9)

クール・モー・ディー『ファンキー・ファンキー・ウィズダム』
 2年ぶりのフル・アルバム。凄味たっぷりなのは不変だが、その攻撃的ラッピンにはもはや不敵な余裕すら感じられる。JB(ジェームス・ブラウン)ネタがより大目になっている。チャック・DとKRS・ワンとの共演はディープだし、L.L.クールJをもろにサカナにした「それは命とり」には大笑いだし、なんたって濃密。(9)

オークタウンズ3・5・7『フリー・ローディッド』

M.C.ハマー一家の女性ラッパー2人組のセカンド・アルバム。ラッピンは決して上手いほうではないと思っていたが、今回は歌をたくみに盛り込んで、そのへんをうまくカヴァーしている。が、そのせいで中途半端な印象も強い。ダンスしている映像と一緒なら、もっと楽しめるんだろうが。どうせならヴォーカル・デュオとして再出発しては?(6)

ステレオMC’S『スーパーナチュラル』
 リミキサー・ユニット=アルティメイタムとしても知られるロンドンの3人組。去年の秋にリリースしたセカンド・アルバム(日本ではデビュー作)が何故か今ごろ登場。サイケなイラストのジャケットが印象的だが、音はさほどサイケでもアシッドでもない。確かにクールではある。低音の呟きの語りはなかなか迫力がある。聴きどころは多い。(7)

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