大著作集『大音海』の編纂を兼ね、湯浅学さんの過去の原稿に書き下ろしの解説を加えて掲載していく「大音海の岸辺」第25回は、90年代前半に『ミュージック・マガジン』で担当していたラップ/ハウス欄レヴューの全掲載・最終回です。今回は1993年10月号~1994年12月号に掲載されたレヴュー(94年1月号よりラップ欄のみ担当)を3ページに渡ってお届けします。まずは映画『JUDGEMENT NIGHT』『黒豹のバラード』のサントラやバラエティに富んだコンピレーション、オムニバス作品が多数登場した93年10月号~94年1月号の原稿から。

ジャングル・ブラザーズ『J・BEEZ ウィット・ザ・レメディー』




ラップ/ハウス レヴュー


文=湯浅学


※アルバムタイトルがアーティスト名と同名の作品、もしくは、コンピレーション作品はアーティスト名を省略。各レヴューの末尾の数字は10点満点中の点数。(V)=ヴィデオ作品


ジャングル・ブラザーズ『J・BEEZ ウィット・ザ・レメディー』

 3年ぶりの新作は、やや覇気が足りないような気も。しかし内容はやはりただ者ではない濃さである。ビートの緩急が自由自在。ちょっと聴くとえらく普通に聞こえてしまうくらいだが、聴くほどにその気くばりぐあいがわかる。新技もある。(8)

クリス・クロス『DA BOMB』
 大人になったってことは大人しくなったってことか? と思うところもあるセカンド。ジャーメイン・デュプリがまた面倒見ている。聴かせよう、という気持ちがより強く作用しての、ちょっとした渋さだろう。ジャンプ度は減ったが、これはこれでちゃんと骨がある。やっぱりただのガキじゃねえぞ。(7)

スムーズ『ユー・ビーン・プレイド』
 『メナス・Ⅱ・ソサエティ』のサントラにも収録されていた期待のロサンゼルス出身女性ラッパー/シンガーのデビュー作。ラップと歌の両方ともパワフルかつ、その名の通りスムーズにやりコマすんですよ。腰の据わりのよさ、余裕の節まわし。スムーズ嬢の兄=クリス・ストークスによる音作りもちょっとヘンテコでよい。(8)

ルーク『イン・ザ・ヌード』
 アルバム・タイトルが馬鹿らしく素晴らしいいつもながらの助平もの。いきなりクラフトワークで、おやおやと思うのもつかのま、スカスカのマイアミ・サウンド。エロ会話をハサみ込んで盛り上げ、責めたり撫でたり揉んだり舐めたりの、緩急強弱使いわけての大サービスこそ、男の甲斐性だってさ。(8)

95サウス『クアド・シティ・ノック』
 米国を南北に走る高速道路名をグループ名にしたマイアミの5人組。だからか、やっぱり下ネタ系で、よりヒップ・ハウス的なせっかちなビート中心。抜けのいいスッカンスッカンのサウンドには、なんとなく聴き流せてしまう無理のなさがある。(6)

MCブリード『ザ・ニュー・ブリード』
 デトロイトのラッパー、その3作目。プロデュースはコリン・ウルフ、D.O.C.、ウォーレンG、といった米西海岸ハードコア連。ねっとり、じっくりと攻める音作り曲作りがファンキーなのは当然だが、太くてゆるいラッピンもなかなかの妙味。全体に二番煎じっぽいが。人気もの2パックもゲスト参加。(7)

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