小説家・桜井鈴茂さんの連載エッセイ「サバーバン・ブルーズを蹴散らしながら」第6回です。前回のエッセイの最後で、今回は桜井さんが最近新たに仕事場を構えたアーバンなエリアについて書かれることが予告されていました。が、何故か始まりは新潟県の三条市から――




文・写真=桜井鈴茂


 今回こそ、仕事場を構え、平日のほとんどを寝泊まりするようになった都心について、そして都心で過ごしている時に思うところをあれこれと書くつもりなのだが、今まさにこの瞬間に、おれは新潟県三条市にいるので、まずはそこから始めようと思う。

 なぜ、新潟県三条市にいるかというと、副業――というか金銭的には主だが気持ちの上では副である、といっても手を抜いているという意味ではない――のほうの取材で来ている。ここまでは池袋発の高速バスを使った。理由は二つ。一つには、会社からは新幹線代が支給されるので、バスを使って、運賃の差額をちゃっかり懐に入れようという、さもしい魂胆。二つには、こちらのほうがじつは理由として大きいのだが、新幹線が好きじゃないから。なぜって、速すぎるし、早すぎる。飛行機はともかく、地上におけるあの速さは、不快とまでは言わないが、心地よさからは程遠い(だから、京都・大阪方面に行くときは「のぞみ」や「ひかり」ではなく、極力「こだま」を使うようにしている)。そして、速いのだから当然だが、目的地に到着するのが早すぎる。せっかく野を越え山を越え新潟県三条市くんだりまで行くというのに、上越新幹線を使ったら、たったの1時間59分だよ? まあ、移動時間は短ければ短いほど良いという人もいる、というか、そっちのほうが圧倒的多数かもしれないが……ゆえにリニア新幹線が開発されてるんでしょ? そしてその開発や建設に何兆だか何十兆だかという莫大な金が注ぎ込まれているんでしょ? 最高速度がギネスに認定されて得々としてるんでしょ? ――おめでたい。まったく。そんな金があるんだったら、地方の小都市や田舎町の交通の便を良くしろ、って。日に数本しか列車やバスがないとか、隣町の病院まで行くのにタクシーを使うしかないとかいった町が、全国にはたくさん存在するっていうのに。そりゃあ、田舎のじいさんやばあさんや老犬や金魚を捨てて都会へ出ていきたくなるよな。それでもって、東京ばかりがチヤホヤされることになるわけだ。

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