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2016年03月号 vol.3

大音海の岸辺 第26回 後編 (湯浅学)

2016年03月20日 22:58 by boid
2016年03月20日 22:58 by boid
「大音海の岸辺」第26回、後編はRCサクセション、忌野清志郎、江戸アケミ追悼コンサート、遠藤賢司、岡村靖幸についての原稿をお送りします。書き下ろしの解説は、これまで邦楽に関する原稿を書いた際に起こった出来事や洋楽について書くときとの違いなどについて。

岡村靖幸「ハレンチ」



文=湯浅学


RCはココロイキだ! 頭で聴いてちゃわかんねえ
RCサクセション★VIDEO

①『ザ・ティアーズ・オブ・ア・クラウン~日比谷野外音楽堂ライヴ』
②『スペードのエース』(企画・演出 川崎徹)
③『RCサクセション・アット・武道館』
④『THE KING OF LIVE AT BUDOHKAN』
⑤『HAPPY HEADS LIVE IN JAPAN』(忌野清志郎&ザ・レザー・シャープス)

 こいつらの魅力のひとつというのは、見ているうちに聴いているうちに、何か自分自身がやっているような気分にどっぷりとひたれてしまう、充足感にあるのだと思う。
 ファンであるが故に、アーティストと自己同一と見い出し得るというのは、スターの必要条件かもしれない。しかしこいつらの場合は、もっと地つづきの感動とでも言うべき連帯感ががっちり横たわっているのだ。
 いつまでたっても同じ高校出身という感じがしてしまうのだ。
 レコードでもそうだけど、ビデオならなおさらだ。
 なにしろライヴだと音に直しがききゃしねえからなあ、へたっぴなのがモロ出しだ。  でもウダウダ言ってちゃいけないよ。ロックだぜ。ようはココロイキだ。頭で聴いてちゃ踊れねえ。
 バラードだって、身にしみねえ。
 その昔、っても15年ぐらい前のことだがRCが、3人でハードなフォークやってたころ、俺はよくライヴで見たもんだった。
 フォーク系の雑誌のインタヴューで、そのころ、「ウィルソン・ピケットをフォークにしてやっているようなものです」と答えていたのが印象的であった。
 結局今は、その姿勢のまんまがロックのバンドになったということだ。気持ちは同じだって。
 さてRCはLPの数は多いが、ビデオは5本出ている。
 『RCサクセション・アット・武道館』は81年12月24日の日本武道館でのギグを71分にまとめたもの。
 ほとんどミック・ジャガーのキヨシローと、キース・リチャーズをもっと下手にしたチャボがわさわさドタバタと楽しめる。
 「愛しあってるかい」って、名コピーもどばっと発射される。
 全13曲で、さすがに「スローバラード」のころになるとこちらもしっとりとした気分がほとばしってしまって困る。
 ところでこの「愛しあってるかい」が使われる前、たしか77年ごろだと思うが、「上を向いて歩こう」とか「ステップ」とかで、復活のきざしが見えはじめたころは、「みんな、ソウルは好きかい」って言ってたんだよな。なんかこっちのほうが、イナタくて俺は好きだ。
 『スペードのエース』は、あの川崎徹企画・演出による8曲入りのイメージ・ビデオ集。
 さすがによくできていて、旧来の友人・泉谷しげるも「横浜ベイ」に友情出演している。
 ほとんどゴダールの『ワン・プラス・ワン』の、スタジオ・ライブの2曲はぞくぞくものだし、「すべてはALRIGHT」で、イエスになっちまうキヨシローというのも深いものがあるよな。
 「だって俺は自由自由自由」(「自由」)ってのも、うれしくもたのしい曲だ。
 そういえばキヨシローと高校が一緒で友人の百恵のだんなの三浦友和も出てんだぜ。34分、あきないの、けっこうこれ。
 それから、86年つまり去年の8月16、17、23、24日の4日間にわたる日比谷野音でのライブをまとめた54分もの。
 こりゃ円熟ですよ円熟。
 動きゃミックで歌えばビースティーかなんとか。なんもいわずに見てりゃいい。
 OK。
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