今週は2本の映画川をお届けします。まず1本目は現在公開中のアニメーション映画『父を探して』を取り上げます。土居伸彰さんの連載「Animation Unrelated」でも紹介されたこの作品では、ブラジルのアニメーション作家、アレ・アブレウ監督の多様な色彩と筆づかいによって、ブラジルの歴史や現実的な問題を背景とした、ひとりの少年の長い旅、彼が出会う"世界”が描かれています。本作が、少年が出会う世界そのものの新鮮さをいかに表現し得ているのか、映画批評家の三浦哲哉さんが考察してくれました。




文=三浦哲哉


 新鮮な驚きに充ちた美しい作品だった。
 新鮮さの印象は、この作品の主題と本質的につながっている。本作は、この世界に生まれ落ちた「少年」が、「世界」と新しく出会う、という出来事それ自体を描こうとする。原題は「少年と世界」だ。そのいわば絶対的な「新鮮さ」──「世界」がこのように在ることそのものの「新鮮さ」を表現しうるかどうかが、作り手たちの挑戦だったのだと思われる。そしてこの挑戦には、高畑勲の名作『かぐや姫の物語』に比肩するような成果が与えられたのではないか。異界から地球に生まれ落ちたかぐや姫が、「この世」の美しさと醜さとを一から経験してゆくときのあの驚くべき「新鮮さ」に匹敵するものを本作は表現しえているように感じられた。

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