梅田哲也さんの連載「ほとんど事故」の23回目です。人が舞台に上がり、他人の前でパフォーマンスをするとはどういうことか。今回は、神戸をベースに活動する知的な障害を持つ人たちを含むアーティスト大集団・音遊びの会の公演やワークショップに関わってきた経緯から、先日13日におこなわれた10周年記念公演についても紹介してくれています。
文=梅田哲也
写真=関本彩子、坂口政広
障害を持った子どもたちによる即興演奏を中心としたバンド"音遊びの会"の活動については、ぶんちゃんを通じて知っていた。ぶんちゃんは友人の娘で、僕たちは2002年に大阪にオープンしたBRIDGEという音楽のスペースの立ち上げのなかで出会い、多いときは週のほとんどの夜のイベントで顔を合わせていた。当時、最も自分の身近なところにいる子どもであったぶんちゃんと接するなかで僕は多くのことに気付いたりしながら、彼女の存在そのものが、少なからず僕の作品に影響を及ぼしてもいただろう。ぶんちゃんが音遊びの会に参加しはじめたのはバンド結成から1年が経過した2006年、彼女は公演に一度だけ出演して、同年の5月に6年間の短い生涯を終えた。僕のところに音遊びの会からの依頼がきたのは、それから3年半後の2009年暮れ。数回のワークショップ(WS)を経て、2010年3月、音遊びの会にとって初の東京公演での共演へとつながっていくわけです。さらにまた約2年後の2012年春、僕はテニスコーツと一緒に再び、音遊びの会の公演に関わることとなり、このときの公演は後に「osumo サウンドレスラー」のタイトルでDVDとしてもリリースされている。そして今回。僕にとっては3度め、計3回のWSを経てからの、10周年記念公演。自分が関わった公演ではどれも、音遊びの会が普段からやってるような、全員が楽器を持ってジャンジャンやり合うようなこととはちょっと違ったアプローチを試みてきたつもり。子どもも大人も全員参加のビッグバンド、その自由でパワフルな演奏はまさに音遊びの会の真骨頂なのだけど、それはそれでありながら、静かな空間で、子どもが一人ずつ入場して、一人きりで舞台に上がるようなこと
2018年12月号
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