今週の映画川は、映画批評家の大寺眞輔さんが日本未公開のアメリカ映画『Queen of Earth』(アレックス・ロス・ペリー監督)について書いてくれました。この作品はちょうど1年前に大寺さんが当マガジンで紹介してくれた 『Listen Up Philip』に続くペリー監督の最新作です。湖畔の別荘を舞台に友人同士であるふたりの女性を主人公にしたこのスリラー映画の魅力とは――




繊細な不完全さ


文=大寺眞輔


 90分枠でテレビ放映されたお昼の洋画ロードショーを見た事があるだろうか。あるいは、古いプリントからそのまま粗雑に起こされたとおぼしきVHSテープ収録の映画。それら大半はどうしようもなくつまらないジャンル映画だが、中には奇妙に心に残るものがあったように思う。荒れた画面で音楽もチープ、コマ飛びが酷いだけでなく幾つかの場面がズタズタにカットされている。何か決定的な情報が、コマーシャル放映のために欠落してしまっているのではないか。しかし、そんな焦れったさが逆に奇妙な効果を作品に与えている。繊細で神経症的で、こちらの気持ちを限りなく引きつけておきながら、どこか決定的に不完全な印象を与える映画たち。不完全であるが故に、エンドマークを迎えても私たちを決して安心させてくれない映画たち。例えば、60年代から70年代に作られたアルドリッチやフライシャー、アルトマン、デ・パルマ、ポランスキー、そしてベルイマンら巨匠の作品がそうした中に含まれていた事を私たちは後に知る事になる。あるいは、『呪われたジェシカ』がそうだろう。こうした繊細な不完全さの系譜を頭に思い浮かべれば、あなたはアレックス・ロス・ペリーの新作『Queen of Earth』についておおよそイメージできたことになる。

この記事は登録読者だけが閲覧可能な内容を含みます。続きを読むにはPublishers IDによる読者登録が必要です。