小説家・桜井鈴茂さんのエッセイ連載「サバーバン・ブルーズを蹴散らしながら」第8回です。昨年末から四谷に仕事場を構え、都心で過ごす時間が長くなった桜井さんでしたが、連載第1回からすでに予告されていた、東京郊外(川崎市)からの転居がついに現実のものになります。はたして、新しい住まいはどこになったのか? そしてその転居の最中で味わった"引っ越しハイ”とは?
文・写真=桜井鈴茂
どうも、しばらくです。前回のエントリーが4月の第1週だから、4か月ぶりということになるのか。4月初旬というと、首都圏では桜が散ったばかりか散りかけている時期だけど、その後……芽吹いた草木の緑は徐々に濃くなり、陽春のさわやかな風は薫って、初夏の日差しが降り注ぎ、梅雨がやって来てしばらく停滞してようやく明け、今や夏も真っ盛り……ぼくとしてもなかなかに感慨深いんですけど、お元気でしたか?
まあ、一言で、4か月、といっても、その4か月がどんなふうに人生の上空を流れていったかってのは人それぞれである。当たり前だけども。当たり前すぎて口にするとアホみたいだけども。なあ〜んも変わっとらんよ4か月ぶん歳取った以外は、という人もいれば、この4か月の間に、前の彼氏とは別れて〜、新しい彼氏ができて〜、その彼氏と先月から暮らし始めてて〜、仕事も変わったし〜、具体的にはアクセサリー・ショップの店員は辞めてワインの輸入業者の営業事務に転職したの〜、ふだん聴く音楽も前の彼氏の好みだったオルタナ系から新しい彼氏の好みのMPBに変わって〜、運動とか超苦手だったのにボルダリングを始めたらはまっちゃって〜、それからショックなことに大好きだったおばあちゃんが死んじゃって〜、でもお姉ちゃんのところに赤ちゃんが生まれたから家族の数はプラマイゼロで〜、ていうか、じつは生理が遅れているからひょっとしたらあたしもお母さんになるのかも〜……みたいな人も、この広い世の中にはきっといることだろう。
2018年12月号
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