大著作集『大音海』の編纂を兼ね、湯浅学さんの過去の原稿に書き下ろしの解説を加えて掲載していく「大音海の岸辺」。今回から2003~2005年に音楽雑誌『remix』で連載していた「闇の中の黒い人」全24回の記事を、2回に分けて再録します。同連載は「有名すぎてかえって実はよく知られ(聴かれ)ていない偉人」をはじめとする黒人ミュージシャンを毎回ひとりずつ取り上げたもの。まずは第1回から第12回までの連載を3ページぶち抜きでお楽しみください。トップバッターはプリンスです!

プリンス『One Nite Alone……Live!』


闇の中の黒い人


文=湯浅学


第1回 プリンス

 すぐそこにいるのに見えないことにされている人は自分がそこにいることを声高に主張すればするほどやっかい者あつかいされてしまいがちだ。あいつおかしいんじゃねえの、やっぱり。とあらかじめその人を疎外していた側の人間がますます嫌悪を強めるというさらにどうしようもない状況が出現したりする。かつて、つい50年ほど前のアメリカ黒人は見えないことにされることが少なくなかった。もちろん白人社会に属する人々から。アメリカ合衆国においては日本人や中国人やラテン人もそういう立場に置かれていたわけだが。かつてアメリカ黒人は、という話をしようというわけではない。すでに"終わった”とか"まだやってたの”とか"よくわかんないんですけどすごいらしいっスね”などといわれてしまった重要人物、もはや取り立てて何かいわなくてもいいんじゃないのと考えられがちな人、あまりにも皆(主に口うるさいおやじたち)があれこれいってきたんでウザくて近寄りにくい印象を与えている人、有名すぎてかえって実はよく知られ(聴かれ)ていない偉人、そういう人々についてあえて今さら考えてみようと思う。口はばったいことや老婆心は好きではない。しかし俺も年齢的には十二分におっさんだ。

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