boidマガジン

2016年10月号 vol.2

【再掲載】 黒沢 清 インタヴュー

2016年10月30日 02:53 by boid
2016年10月30日 02:53 by boid
『ダゲレオタイプの女』公開を記念して、2月号で掲載した黒沢清監督のインタヴューを再掲載します。黒沢監督が『ダゲレオタイプの女』の製作の経緯や撮影秘話を語られています。
※【追記】この記事の無料公開期間は終了しました


© FILM-IN-EVOLUTION - LES PRODUCTIONS BALTHAZAR – FRAKAS PRODUCTIONS - LFDLPA Japan Film Partners - ARTE France Cinéma


聞き手=樋口泰人
写真提供=ビターズ・エンド


――ここ2~3年の動きを含めたお話を何度かに分けて伺っていければと思っているんですが、昨年、フランスで製作した映画が遂に日本でのタイトルも発表されましたね。

黒沢
 今やっているフランス映画は仮題で『銀板の女(La Femme de la plaque argentique)』といっていますがフランスでのタイトルはまだ決まっていなくて……。日本では『ダゲレオタイプの女』というタイトルで今年の秋に公開される予定です。

――『ダゲレオタイプの女』が動き始めたのっていつ頃のことですか?

黒沢
 簡単な経緯をいうと、『トウキョウソナタ』(08年)のあとぐらいだったと思いますが、フランスで映画を1本撮りませんか、それに適した企画はありませんか、というオファーを吉武美知子さん(プロデューサー)からいただいたんです。その時に思い出したのが15年前くらいにイギリスのプロデューサーから依頼されて書いたプロットでした。それはイギリスを舞台にしたホラーの企画だったんですが、残念ながらその話はなくなってしまった。舞台はイギリスということになっていますけども、まあ日本では無理だとしても場所はどこでもいけそうだったので、こんなのがありますと見せたのが『ダゲレオタイプの女』の元になったプロットです。

――具体的に映画化できると決まって撮影まで至ったのは……

黒沢
 やはりフランスでは公共機関からの援助、助成金をとれるかどうかがものすごく大きい。助成どころかそれが製作費の大半を占めている。助成を受けるのは1箇所だけではないんですけど、一番大きいのはCNC(フランス国立映画センター)という機関から出る資金です。それに受かるために脚本を書き、監督意図を書き、書類を集めて提出したんですが、その審査に通ったのが『岸辺の旅』の撮影が終わった直後でしたね。一昨年の7月に僕がフランスに最終的な面接を受けに行ったんですが、その時点で残っている作品が10何本あってその中から3本ほど選ばれるという話だったと思います。ちなみに僕の前に面接を受けていたのはどうもフィリップ・ガレルさんだったようです(笑)。「僕の前がガレル!? ひえ~」って感じでしたけど、面接は簡単なものでした。その数日後に受かったという報せがあって、それでようやく製作が決まったという形でした。
雰囲気を見ていると、(CNCは)単にこの企画は面白そうだから助成するというわけではなく、この人たちはきっちりと作品を作る力があるのかということを見極めたいようですね。審査に通ったのは14年の7月だったんですけど、『岸辺の旅』を撮影する前、同年の3月にはフランスに行ってキャスティングもだいたい決めていました。撮影地もロケハンこそしてませんが候補は挙げてましたし、そうやって面接の前までにちゃんとやる気もあり能力もあることを見せていたことが大きかったと思います。それから日本に住む日本人である僕が監督することに対して、「ほんと?」っていう何か疑わしいところがあったようなんですが、それを払拭するためにも絶対に面接に来てくれと言われました。『岸辺の旅』の仕上げ中でしたからたった一泊で日本に帰ってきちゃったんですけど、わざわざ監督が日本から来て「やります」と言うこと、やる気を見せることが書類以上に重要だったようです。
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