今年から京都に仮寓を構えた青山真治さんによる日付のない日記「宝ヶ池の沈まぬ亀」第6回です。仙頭武則さんとともにプロデューサーを務める映画『はるねこ』(甫木元空監督、12月17日公開)にも出演されていたりりィさんの訃報を受け、無念と落胆の中、死生観という言葉が頭をもたげ――




文=青山真治



6、死生観についてしたためさせていただきます

某月某日、仮寓にて授業の準備中レナード・コーエンの訃報を知り、あああの人も、と悼みながらもレジュメを整え大学へ、ブレッソン講義第六週最初の一コマ『バルタザールどこへ行く』の後で挟んだ休憩中に研究室へ戻ると、置きざりにした携帯電話に甫木元よりの着歴あり。無視してメールチェックするとそこに、りりィさんが亡くなった、という寝耳に水の報せ。それはない、それは。だがここで感情を荒立てては後半の授業に差し支えるとどうにか気を落ち着かせ隣席の同僚である大先輩・福岡芳穂監督にだけ報告し、再び教室である試写室へ戻る。授業を終えるなり甫木元に連絡。事情を確かめ、中庭を見ると福岡さんの隣にやはり授業を終えた仙頭武則の姿が。どんより階段を下り、二人の傍に立つ。苦虫を噛み潰したとはこのことといった仙頭の顔でようやく此方も落胆を色に出せた。

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