湯浅学さんの連載「大音海の岸辺」第21回の後編は、引き続きジョン・レノン&オノ・ヨーコの原稿を掲載。1972年に発表された『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』のレコード評と、「マザー」を出発点にジョンの女性観について考察された文章「ジョンをとりまく女性たちと母への思い」、そして書き下ろしの解説をご堪能下さい。

『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』



文=湯浅学


ジョン&ヨーコ/プラスティック・オノ・バンド『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』


 一度認可されたビザの延長が急に取り消され、ジョンはアメリカ出入国管理局との闘争に入る。背後には、ジョンを政治的危険分子と見るFBI当局が暗躍していたともいわれる。本作が制作された72年(発表は9月)は、ジョンにとって平穏なときではなかった。
 スタジオ録音とライヴ録音をそれぞれ1枚ずつの2枚組。プロデュースはジョンとヨーコ、それにフィル・スペクター。スタジオ録音のほうは、サウンド的には前年の71年12月に発表されたシングル「ハッピー・クリスマス」とほぼ同様で、スペクター色がほどよく出ている。厚みがあって力強い。ストリングス・アレンジも冴えている。ジョージの『オール・シングス・マスト・パス』と並んで、70年代のスペクター作品の代表作に挙げたいものである。

この記事は登録読者だけが閲覧可能な内容を含みます。続きを読むにはPublishers IDによる読者登録が必要です。