カーネーションの直枝政広さんがオーディオの工作や改良に奮闘する日々の中で出会った音について綴る『宇宙の柳、たましいの下着』放浪篇第19回です。
1965年に発表されたダスティ・スプリングフィールドの「Some of Your Lovin'」。そのシングル盤と、同曲の作者であるキャロル・キング自身が歌っているレアなシングル盤「A Road To Nowhere c/w Some Of Your Lovin' 」を手に入れた直枝さんですが、2枚とも異様に大きな音でしか再生されないという問題が。そこで愛用のモノラル・カートリッジ「VRⅡ」にある仕掛けを施してみると……




Some of Your Lovin'


文・写真=直枝政広


 オーディオやレコードのことをずっと考えている。いや、毎日てんてこまいであれこれと音楽を聴く時間もないのだが、ふとした隙にここぞと集中してあの世界に思いを馳せる。インターネットで検索すれば「さぁ、買えるものなら買ってみろ」とでも言いたげな、メンテ済みの真空管アンプやレア盤がさっそく目に飛び込んで来るわけで、資金さえあれば手当たり次第に購入すればよいのだが、そんなことをやっていたらおそらく1日で人生は破綻する。
 疲れ果てた時、とりあえずカートリッジの針の先を40倍のルーペで覗きこむ。すると不思議と胸がすうっと楽になる。ミクロの世界を覗き込むと胸の中でざわついていた騒音は消えてしまう。眺める事に飽きたら激落ちくんのスポンジでその針先やカートリッジの埃を取りはじめたり、レコードをかけながらどこかに余計な振動がないかターンテーブルに触れてみたりする。我が愛機であるDENON DP-50Mのアームは弛みやすいので注意が必要である。タイミングをみて本体の裏の穴からペンチを入れ、ウィーク・ポイントのネジをきつく締めなければならないのだ。それには先が熊手のように曲がった細身のラジオペンチを使う。アームリフトの昇降レバー部分も少し緩いから消しゴムを挟んで固定していたが、さすがに不穏だからホームセンターで買った防振ゴムを切ってそこに詰め直した。そんなちょっとしたことが楽しい。忙しい時には意識的にそういった簡単な修繕を行う、そうすると短時間でも十分な息抜きになる。

この記事は登録読者だけが閲覧可能な内容を含みます。続きを読むにはPublishers IDによる読者登録が必要です。