湯浅学さんの大著作集『大音海』の出版を目指し、そのイントロダクションとして湯浅さんの過去の原稿に書き下ろしの解説を加えて掲載しております「大音海の岸辺」。第22回は90~95年に執筆されたヒップホップ/ラップ関連の原稿を2ページにわたってお送りします。まずは89年に発表されたデ・ラ・ソウルの革命的アルバム『3フィート・ハイ・アンド・ライジング』のレビューや『CDジャーナル』誌のラップ特集への寄稿、NBAのスター選手だったシャキール・オニールのデビューアルバム評ほか6本の原稿から――

デ・ラ・ソウル『3フィート・ハイ・アンド・ライジング』



文=湯浅学


デ・ラ・ソウル『3フィート・ハイ・アンド・ライジング』

 ヒップホップは解体再構成のラディカルなミニマル・ミュージックという側面を持っているが、広く世に知られてから十年余、ついにヒップホップのこれまでの歩み/成果をも解体再構成するやつらまでもが出現した。
 デ・ラ・ソウルはクールなようで実は、これまでのどのラップ野郎たちにもなかった醒めたワイルドさを強く感じさせるところは、新鮮鮮烈でファンクネスの今日的展開の最先端とさえ言いたいほどのものである。ブレイク・ビーツのネタの拾い方のレンジの広いセンスや、意匠としてフラワー/ヒッピーものを取り入れる、そのアッケラカンとした堂々たる青さがとてもうれしい。Pファンクものをストレートに取り入れた「ミー・マイセルフ・アンド・アイ」はニューヨーク・ラップ界にあって、ハードなPEの「ファイト・ザ・パワー」とならぶ89年の代表的作品といえる大ヒット作となった。自らをプラグ1、2、3と称するポスデヌース、トゥルゴーイ、メイズの3人組。THE INNER SOUND YO! = DAISYを基本コンセプトである、と称する第三世代ラッパーの旗手は超自然体で、ひょうひょうとしていながらも「ラップはあくまでもラップ」と、その骨はもちろん太い。このデビュー・アルバムの衝撃はあまりにも大きい。

(初出不明/90年9月)

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