「大音海の岸辺」第23回の後編も引き続き『ミュージック・マガジン』掲載の「ラップ/ハウス」レヴューを。パブリック・エナミーやビースティ・ボーイズなどの有名どころから、当時日本のアーティストも増えていたハウス・ミュージックの作品も多数。湯浅さんが今回新たに書き下ろした解説とともにご覧ください。

ブギ・ダウン・プロダクションズ『セックス&ヴァイオレンス』



文=湯浅学


『ザッツ・クラブ・トラックス~MEDIAハウス・コレクション』
 イタリアのいわゆるダンス系レーベル=メディア関連の7つのレーベルのヒット曲を集めたもの。スマートさよりも、何が何でも踊らんかい、というエグさ強し。二番・三番煎じでも堂々とやっつける屋台根性あり。(6)

『アンダーグラウンド・ダンス・ミュージックVOL.1』
 全米各地の埋もれた実力派を発掘しようというシリーズ。ニューヨーク、ニュージャージー、シカゴ、マイアミからの産地直送といったもの。シンプルで頑丈。奇をてらわずに確実に身体の芯を突くもの揃い。(8)

『VIDEO ENDORPHIN①』(V)
 キュートメン、ガルト・デップ、サブリミナル・カームのクリップを収録。チラチラギラギラの連続の中で動きつづけるキュートメンの2人はけなげだが、複雑で手の込んだ技術と映っている人たちの動きがまったくすれ違っている(ズレ方が魅力なわけでもない)。ガルト・デップは虚しい。そつない愛情がたっぷり含まれたまなざしのサブリミナル・カームは放っておけない。(6)

『クラブ・クリップス』(V)

 選定基準がよくわからないバラけた顔ぶれによるクリップ集。どうってことないやつらの中で、クリスタル・ウォーターズの図々しさとポーラ・アブドゥルのじんわりくる清々しい助平さ、インコグニートの野放図な太さ、ATCQの地元臭、ハイ・ファイヴのかわいい間抜けさ、それらこそを見よ。(7)

(『ミュージック・マガジン』1992年4月号)


ブギ・ダウン・プロダクションズ『セックス&ヴァイオレンス』
 無駄のなさが、筋力フル活用的パワフルさを引き立てた。ラップ部分はライヴ(スタジオでの)で収録されたらしい。新しさよりも確実さ。神経の核を突く音と声に迷いはまったくない。一方的発言も満載。(9)

シスター・ソウルジャー『360 DEGREES OF POWER』
 パブリック・エナミーに一昨年から参加している声のでかい女性活動家のソロ・デビュー・アルバム。ラップは力で押すタイプで、むしろ演説のほうが心に残る。存在自体を武器と成さんとする心意気が熱い。サウンドはもちろんすばらしい。(8)

サブソニック・ファクター『響―ECHOES―』
 以下3点は日本のハウス。これは女性ヴォーカルとラッパー(あまりうまくない)、それに日本人サウンド・コンポーザーという3人組。メリハリは効いているが、ハウスという括りからハミ出す部分はほとんどない。サウンドは大きければ大きいほど身体になじんでくる気持ちよい低音もの。(6)

More Deep『NUDIST』
 取ってつけたような"オリエンタル”風味は気持ち悪い。ゴリ押しだけのほうがスッキリしたろうに。サウンドの作りはしっかりしており、楽しみどころも多い。が、そんなにディープとは思えませんでした。(6)

ガルト・デップ『VOLUME ONE』
 よくまとまっている。でもどこかのっぺりした印象。声音が入っているだけで邪魔くさいと感じさせるところがある。考えすぎかもしれない。(5)

ウェストバム『プラクティシング・マニアック』
 ドイツのDJの日本デビュー作(本国での3作目)。テクノの本家だけあって(?)これはなかなか鋭い刺激物。技も豊富で飽きさせない力作といっていいだろう。不景気ではなく、愛嬌がある点がほほえましい。(8)

『ジョイ・サリナス』

 イタリアのマックス&フランク・マイノイアのプロデュースによるハウスねえさんのデビュー作。ヨーロッパ各国でヒットした「ロッキン・ロマンス」も収録。腰はあまり強くなく、どちらかといえば爽やかなハウス。(6)

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