そして、ビックフォードさんは2月に再来日し、「GEORAMA2016」に参加する予定です。どうぞお楽しみに!
高松にて、ブルース・ビックフォード
ブルース・ビックフォードの「アニメーション」はすべてを愛する
文・写真=土居伸彰
どれだけ仙人のような風貌をしていて、どれだけの「伝説」と「神秘さ」が付随しようとも、ビックフォードは人間なのだということをようやく実感した。僕たち皆と同じように幸せを求め、でも現実に裏切られて傷つき、自分の道を頑なに進むことでその傷を懐へと隠すけなげな存在。12月13日から22日までの10日間、高松メディアアート祭での展示「Sublime World of Mr. Bickford」のために68歳にして初めての来日を果たしたブルース・ビックフォード。シアトル在住のクレイ・アニメーション作家。フランク・ザッパとの仕事で有名になり、しかしその後の消息を知る人はあまり多くない。彼が何者なのかについては、以前書いた文章もあわせて読んでもらいたいのだけれども、昨年数時間だけ会ったときにはビックフォードはやはり人間離れした存在のように思えた。でも、今回、展示のコーディネーターとしてビックフォードの来日にずっと付き添ったことで、人間としての彼についての理解の解像度はずいぶんと上がった気がする。強さと弱さと脆さが混じり合い、矛盾する感情に飲み込まれ、翻弄される人物としてのビックフォード。社会性がまったくないがゆえに、それらの感情をむき出しのままに歩き回る存在。自らの社会性のなさも十分に理解し、それゆえに自分なりの「殻」を生存のために作り上げ、だがそのためにますます社会性を失ってしまうスパイラルに陥り、唯一無二の創作ができてしまうがゆえに、さらにその変人としてのアイデンティティが固定されてしまうこと。そのことに誇りを持ち、でも、わたしも皆のように楽しい社交生活を送りたい、という悲しみも同時に備えて…ビックフォードは蠢き渦巻く感情が入り組んで流転する、とても複雑なエモーションの集合体なのだ。
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