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2016年01月号 vol.4

大音海の岸辺 第24回 Part3 (湯浅学)

2016年01月30日 13:31 by boid
2016年01月30日 13:31 by boid
「大音海の岸辺」第24回3ページ目は、93年3月号~6月号の『ミュージック・マガジン』に掲載された「ラップ/ハウス」レヴューを。10点満点のビブラストーン『スマイル!!』、スチャダラパー『ワイルド・ファンシー・アライアンス』、アイス・キューブ『略奪者』、ドクター・ドレー『クロニック』を筆頭に良作が多数発表された時期だったようです。

ビブラストーン『スマイル!!~イッツ・ノット・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド』



文=湯浅学


ビブラストーン『スマイル!!~イッツ・ノット・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド』
 完璧という言葉はいやだけど、ラップ&ヴォーカル&インスト・バンドとして、これ以上のパワーを持った存在は他国には今のところいません。ドラマは現実を甘く模倣しようとし、現実は軽くドラマの真似をする世の中で、現実や真実なんてなんだってんだ、と真理を求めんとする勇気が漲っている。(10)

スチャダラパー『ワイルド・ファンシー・アライアンス』

 イラ立ちは去って、生活上のリズム感まんまのラッピンで、すごい説得力が生まれた。素直にやってて、結果が鋭いんだから。言葉も音も。全体に漂うなにげない=自然な批判力こそが、傑作の証しである。(10)

アイス・キューブ『略奪者』
 凄い。地面から噴出する火柱である。音もラッピンも、なにより力業の、その力の量が並はずれている。アルバム全体の流れ、構成はほとんどドキュメンタリー映画。単なるコワモテの無法者ではなく、差別構造を土台からぶち壊そうとするがゆえの必然的ハードコアに他ならぬ。(10)

へヴィ・D&ザ・ボーイズ『ブルー・ファンク』
 テディ・ライリーから離れて、ピート・ロック、トニー・ドファットらと共闘、好結果を呼んだ。ジャズィな色が濃い。スティーリー&クリーヴィによるレゲエも良好。よりシリアス度を増したというべきか。(8)

ブラン・ニュー・へヴィーズ『ヘヴィ・ライム・エクスペリエンスVol.1』
 米国の精鋭ラッパーたちを迎えての楽しいセカンド。決して達者ではないが、心意気がテクニックを上回っているファンクの秀作。各ラッパーの特質とわきあいあいで溶け合おうとしている。かっこつけて背伸びしてないのがいい。日本盤にはボーナス3曲あり。(8)
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