
文=三浦哲哉
新鮮な驚きに充ちた美しい作品だった。
新鮮さの印象は、この作品の主題と本質的につながっている。本作は、この世界に生まれ落ちた「少年」が、「世界」と新しく出会う、という出来事それ自体を描こうとする。原題は「少年と世界」だ。そのいわば絶対的な「新鮮さ」──「世界」がこのように在ることそのものの「新鮮さ」を表現しうるかどうかが、作り手たちの挑戦だったのだと思われる。そしてこの挑戦には、高畑勲の名作『かぐや姫の物語』に比肩するような成果が与えられたのではないか。異界から地球に生まれ落ちたかぐや姫が、「この世」の美しさと醜さとを一から経験してゆくときのあの驚くべき「新鮮さ」に匹敵するものを本作は表現しえているように感じられた。
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