boidマガジン

2016年04月号 vol.4

樋口泰人の妄想映画日記 その13

2017年11月02日 16:27 by boid

日常の生活を流れる時間と映画を流れる時間が妄想を絡めて交錯する「妄想映画日記」、久しぶりの登場です。4月初旬、思わぬアクシデントで左足を負傷した樋口社長。砂漠を進むような足取りで歩いたその先には、『地球に落ちて来た男』(ニコラス・ローグ監督)のデヴィット・ボウイの姿がありました。



文=樋口泰人


 振り返るとこの1年、むちゃくちゃな目に遭っているような気がする。いや、気がするどころではないのだが、いったい何が起こったか、身近な人は割と事細かにわかっているだろうけど、知らない人にそれを事細かに伝えるのも面倒なので、とりあえず目先のひどい目のことを。

 4月2日土曜日、恵比寿での爆音映画祭の初日を終えての帰宅途中の丸ノ内線。23時過ぎだったように思う。車内はその時間帯にしたら驚くほど空いていて、ただまあ、座れるということではなく、わたしは立ったままあいほんを見ていた。新中野を過ぎたあたりだったか、いきなりガツンと何かが左ひざの裏側あたりにぶつかってきて、わたしは一瞬何が起こったかわからず、というかわかる間もなくぶっ倒れていた。振り返ると、泥酔者が倒れている。どうやらわたしの斜め後ろ側にいたらしいその泥酔者が意識を失って勢いよく倒れ、彼の頭か肩がわたしの左ひざの外側にぶつかったようだ。もう、半端なく左足が痛む。しばらく起き上がれなかったのだが、骨折していたらやばいので、とにかく立ち上がれるかどうか試してみると何とか立ち上がれる。ゆっくりとなら歩けそうだ。泥酔者はとにかく思い切り床にも顔面をぶつけたらしいのだが、あまりに酔っ払っているので、意識不明というより、むにゃむにゃと軟体動物のようになって床の上にとぐろを巻いている。こんな得体のしれない物体に関わるのも嫌だととっさに思ってしまったのがいけなかったのがあとから判明するのだが、まあ、その場ではおそらく明日になれば思いきり痛いし腫れているだろう自分の顔面のこともわからずただその場にいるだけの何ものかから、早く離れたい、いずれにしても、今この場所でこの人に何を言っても何をやっても無駄だし、ただでさえこんなひどい目に遭ったのにさらに無駄な時間を費やしたくないと思っているうちに、何ものかはむっくりと起き上り東高円寺で降りていく。とりあえず、災いあれと呪いをかけるが、まあ、思ったほど怒りはないのは、あまりのことに茫然としているだけだったのか。

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