
電気の武者の孫
文=直枝政広
なんとなく音が出ているし、聴けているからと安心していても、それがオーディオの最良の状態だとは限らない。例えば電源の極性をひっくり返して挿すだけでも音の違いを感じることがある。その作業を繰り返すとわかるが、何かしっくりこないこともあれば、シンバルの抜けが特別良く感じたり、意外な奥行きが面前に広がることもある。こういった根拠の無い感覚は「オカルトだ」と一笑されがちだが、あなどれない。電源コードには極性の目印があるものと無いものがある。メーカーがそれを指示しないわけだから普通は気にしなくても良いポイントなのだが、ここはプラグの先っぽをじっと睨みつけてどちらがホットかコールドかを考えないといけない。わからなくともまずは聴く。自分の感覚さえ揺らがなければ、選んだレコードの音が狙い通りに鳴って、さらに胸がキュンとなるポイントを見つけられればほぼ問題はない。音が気持ち悪かったらセッティングをやり直せばいいのだ。
まずは足下から見つめ直す。使っている機材の電源コードをあわててオーディオ用の高価な太い物に替えたりする前に、基本的な電源周りを見直すべきだろう。わたしの場合は知り合いから譲り受けた70年代マランツのパワー・アンプとコントロール・アンプ。そしてタンテはDENONを2台。あとは60年代製の(謎の)最高のベルト・ドライヴ「JP」とボロボロのDJ用タンテ(78回転可ゆえSP専用にしている)にMM用フォノイコという平均的でシンプルなシステムだから、とりあえず電源のまとめは楽だ。アース工事を施せば音だって当然クリアになるはずだが、現状は不可解なノイズに悩まされているという実感がない。あせらず少しずつ"音の道"を掃除してゆけばおのずと次の関門が見えてくると思っている。
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