DIE FILMWELTEN DES RAINER WERNER FASSBINDER: Kapitel 1
(Masanori Akashi)


ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの著書『映画は頭を解放する』(勁草書房)やインタヴュー集『ファスビンダー、ファスビンダーを語る』(2013年に第1巻、昨年の8月に第2・3巻(合本)発行)の訳者である明石政紀さんが、改めてファスビンダーの映画作品について考察していく新連載です。初回はまずファスビンダーが1945年に誕生し、映画を撮り始めるまでの履歴について、2ページで詳しくご紹介します。


『ファスビンダー、ファスビンダーを語る』第2・3巻
(著者:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー / 編者:ローベルト・フィッシャー / 訳者:明石政紀)



文=明石政紀


 『ファスビンダー、ファスビンダーを語る』の日本語版を出したとき、「ファスビンダーの仕事」と称し、解説つきのフィルモグラフィほかの付録を添加した。とはいっても付録は付録。ここでは付録ならぬ、本文としてファスビンダーの映画について少しばかり書いてみようかと思う。
 と、そのまえに。
 じつは『ファスビンダー、ファスビンダーについて語る』の付録につけようかどうか迷ったあげく、つかなかったものがある。本人の履歴のようなものだ。だがファスビンダー自身がインタヴュー本文のなかで自分の人生軌跡を振り返っているし、それがいかに主観的なものにしろ、いや主観的だからこそ、たぶんそれにまさるものはない。それに人生と映画が密接に絡み合っていたファスビンダーの作品ほど、それがもちろん人生そのままでないにしろ本人について雄弁に語るものはないし、少なくともお行儀よく整頓された履歴年譜じみたものは、未整頓王ファスビンダーには不似合いであるとの当座の結論を出し、けっきょく添付しないことにした。
 それでも、わが国ではファスビンダーについてそれほど知られているとは言えないようだし、もうちょっと知りたいという人もいるかもしれない。自分の人生ではない人の遍歴のようなものを書くのはひどく気が引けてしまうが、それでもファスビンダーは自分の人生を隠したがる人ではなかったことを当座の気休めにして、前言に反しながらも、わたしが知りえた幾つかの事柄をもとに、とりあえずファスビンダーが映画作りをはじめる前のことをほんのちょっとばかり記してみようかと思う。こんなこと、百も承知だという方は読み飛ばしてしまってかまわない。

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