今年から京都に仮寓を構えた青山真治さんによる日付のない日記、「宝ヶ池の沈まぬ亀」第3回。"サザン・ナイツ”の調べとともに夏が過ぎ、何かと"昭和のスター”を引き合いに出すテレビのご意見番気取りのコメンテーターの言葉に嘔吐しながらも、秋刀魚が美味い季節がやってきました。
文・写真=青山真治
3、エルヴィスを/とともに考える、あるいは底なしのアウェイ感
某月某日、亡母の墓参以来いつのまにかどこもかしこもアウェイと化したとしか印象しえない焦燥の中、ダニエル・シュミット十年目の命日を迎え同時に昨年亡くなったアラン・トゥーサン追悼として名盤『サザン・ナイツ』を久しぶりに聴いたけれどそれは決してきっかけではなく、独立記念日翌日の「アナログばか一代・Tレックス特集」を除けばそんな気持ちにならなかった。あらためてTレックスを、さらにファスビンダーを想起。畏兄湯浅湾のTレックス=「中二病」なる揶揄に禿同、つまり己を知るに至ったが、さて。これは確かだがダニエルは死ぬまで中二だった。さらに、中二の私を生前の母は鋭利に批評していたかもしれないが、しかしその功罪として中二のままでいられぬ己に当惑しながらじいさんになるという醜悪な現在を生きる羽目に。
2018年12月号
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