boidマガジン

2016年09月号 vol.3

樋口泰人の妄想映画日記 その15 前編

2017年11月02日 16:29 by boid

boid社長・樋口泰人による連載は、先月に続き8月1日~31日までのひと月分の日記を2ページでおおくりします。死ぬほど忙しかった7月の疲れを引きずったまま、8月もデスロードは続きます。記憶が失われていくなかで記されるのは、YCAM偽繁盛記でも一部レポートしたYCAM爆音映画祭と10日間の山口滞在の記録のほか、来春公開予定の映画『PARKS パークス』の宣伝・配給プロデューサーとしての仕事や修羅場の車中で書かれた原稿のことなど。



文・写真(一部除く)=樋口泰人


 相変わらず目の前のことで目いっぱいで、後ろを振り返る余裕がない。1か月前の記憶はもう消え入る寸前。8月はまず、7月末の怒涛の爆音や野外上映の疲れから始まったことだけは覚えている。こんな疲労感を感じたことはかつてない。いくらなんでももうこんな暮らしは無理だと実感した。というか、無茶なスケジュールすぎた。それはそれで面白いのだが、できることとできないことがある。決断の時というか、否応なしのタイムリミットが来た感じがする。


8月1日(月)、2日(火)
前夜までの丸の内ピカデリーでの爆音上映の疲れでぐったりしていたはずだが、山積みになっていた月末月初の社長業務を地味にやっていたと思う。

8月3日(水)
映画『PARKS パークス』絡みの打ち合わせや下見。午前中に南口の「coromochaya」。8月末に発行予定のフリーペーパー「PARKS」の取材の件。すでにペーパーを手に取られた方もいるかと思う。映画『PARKS』にも出演してくれた石橋静河さんのインタビューをここで行うのである。吉祥寺の北口はおそらく家賃の問題だと思うのだが、新しくて独自の展開をする小さな店舗がオープンする余裕がなくなってしまった。三鷹寄りの東急の裏側や、西荻寄りのヨドバシカメラの裏側あたりに、そういった店舗が集中しているのだが、南口も気づくといろんな店ができている。この「coromochaya」もそんな店のひとつで、小さな古いビルの2階にあるので、わかっていないと気付かない。オープンしてからもう何年も経っているはずなのだが、わたしも初めて知った。ゆったりとした時間が流れる。
吉祥寺での昼食はまずはカレーのピワンなのだが、水曜日は定休日。それはわかっていたので、迷わず、旧三浦屋地下の中華料理店、翠蘭へと向かうのだが、なんと翠蘭も定休日だった。ここの料理は、値段は少し高めなのだがどれもうまくて優しい。中華料理にハイカラとか言っていいのかどうかよくわからないのだが、わたしの生まれる前からハイカラだったんじゃないかと思わせる、未来と過去とが直結した時間が流れる。
その後、成蹊大学へ。映画の撮影でもあれこれと協力してくれたのだが、今回は、映画完成後の吉祥寺での試写を大学のホールでと、その下見。古い校舎と新しい校舎との(もしかして大学は「校舎」とか言わないのか、なんて言うんだ?)ギャップがすごい。ここでもまた、翠蘭とは別の意味で、過去と未来とが直結している。こういう贅沢は、大学生にはわからない。わたしが若くてもきっとわからなかっただろう。
それから井の頭公園の管理事務所に。来年の5月、100歳を迎える公園の100年祭に、映画『PARKS』も参加する。いつどのような形で何を行うかという話なのだが、いずれにしても潤沢な予算があるわけではなく、映画の宣伝費を工面してのイヴェントゆえ、とにかくこちらのアイデア次第。ないわけではないが、思惑通りいくはずもないこともわかっている。

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