boidマガジン

2016年10月号 vol.1

サバーバン・ブルーズを蹴散らしながら 第10回 (桜井鈴茂)

2016年10月10日 19:48 by boid
小説家・桜井鈴茂さんのエッセイ連載「サバーバン・ブルーズを蹴散らしながら」。都内に引っ越して以降、郊外に住んでいたときの朝の習慣――散歩やベーカリーカフェでの読書など――を失ってしまっていた桜井さん。前回、その習慣を復活させるべく転居先の吉祥寺の街を偵察したものの、結果は不調に終わってしまったようです。では、仕事場のある四ツ谷での朝の過ごし方は…?




文・写真=桜井鈴茂


 居を移してからというもの、すっかりスロースターターになってしまっている。とくに、仕事場で寝起きしている平日は。そもそもが遅寝だが、そのことを差し引いても遅起きなのは、眠りが浅いせいかもしれない。眠りが浅いから目覚めた時もやたらと眠く、もうちょい、もうちょい、とさらなる浅い眠りを貪ってしまうのだ。眠りが浅いのには、自分自身で認識してるだけで三つの原因がある。
 まずは、就寝前にお風呂に入らないから。だったら入れよ、とあなたに言われるまでもなく自分でも重々わかっているのだが、じつはお風呂があんまり好きじゃないのだ(ちなみに温泉地で入浴するのはかなり好きだ、ということは、おれが好きじゃないのは家での入浴、ないし普段の入浴ということなんだろう)。入浴したら入浴したで、いい湯だなあ〜ははは〜ん、と一応は感じるのだが、なにせ面倒くさい、服を脱いだり体をゴシゴシこすったりするのが。自宅では、妻にくさいとか不潔とかありえないとかいろいろ言われるのでなるべく入浴してから寝るが、仕事場では誰にもくさいとか不潔とかありえないとか言われないのでなるべく入浴せずに眠りの中に紛れ込む――そして、半ば眠りながら頭皮がかゆいとか背中がむずむずするとか感じていて、要するに眠りが浅い。
 第二に、音楽をかけっぱなしで寝てしまうから。だったらとめろよ? そう、そのとおり。しかし、寝入る時は寝入る時でナイスな音楽に包まれて眠りに落ちてゆくのってしあわせ〜とか思っていて。許される限りいつだってナイスな音楽を聴いていたいのであって。未明にふいに目覚めたらとびきりナイスな曲がかかっていてうろ覚えの歌詞、あるいは、ただラララとかルルルとかで合わせて歌ったりエアプレイでドラムを叩いたりしてそれもまた……つーか、そもそもこんな時間に目覚めてしまったのって音楽がかかってるからじゃね? とか後で思うのだが、翌晩もまた音楽をかけたまま寝てしまう。
 第三に、明かりを灯したまま寝てしまうから。だったら消せ! いや、でも、寝しなに本を読むじゃん。じっさいにはほとんど読めなくても読もうとはするじゃん。たいていはほんの数行で眠りに落ちてしまうのだが。なおかつ……とても言いにくいのだが、あんまり人に言ったことはないのだが……何を隠そう、真っ暗は怖いんですよ。それこそ悪夢にうなされて目覚めた時とかに真っ暗だと心身が硬直してトイレにも行けなく……なりませんか? ぼくはなります。本当は、読書灯を消した後に豆電球が灯ってるのがベストなんだけど、仕事部屋の照明器具にはちょうどいい明るさの豆電球が備え付けられておらず、結局読書灯をつけたまま寝入ってしまい、それが眠りを浅くする一因である、ということをわりと最近になってしかと認識した。
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