boidマガジン

2016年10月号 vol.2

大音海の岸辺 第31回 前編 (湯浅学)

2016年10月16日 00:31 by boid
大著作集『大音海』の編纂を兼ね、湯浅学さんの過去の原稿に書き下ろしの解説を加えて掲載していく「大音海の岸辺」。今回は急遽予定を変更、ノーベル文学賞授賞を記念してボブ・ディラン特集にしました! まずは1998年に発売された『ロイヤル・アルバート・ホール』までのディランのディスコグラフィーに沿ったレビュー集(1999年の『音山』所収)を再録します。





文=湯浅学


『ロイヤル・アルバート・ホール』(98年)
 66年5月のロイヤル・アルバート・ホールでのライヴといえば、『ブロンド・オン・ブロンド』発表直後でバックをザ・ホークス(つまりザ・バンド)が務めたものである。これほどの殺気が漂っているとは思わなかった。ディランの歌の緊張感と決意と少々の悪意その誠実さと実直な攻撃的音楽性つまり創造力がこれほどくっきり記録されているライヴは稀である。『ブロンド・オン・ブロンド』のころの声/歌唱がなにより好きな俺にとってこれはディラン作品の中でもかなりの上位に位置する。何年かに1度の傑作だと思う。空気の中、歌の立っている空間の粒そのノイズが問いかけ続けるのだ。おまえは歌わないのか、と。アコースティック・セットの選曲に悶えますよほんとに。「ジョアンナのヴィジョン」に「フォース・タイム・アラウンド」と「廃墟の街」も。ハーモニカのぞんざいな吹きっぷりがやたらに扇情的だ。そのパンキーな姿勢はエレクトリック・セットでさらに高まる。「なんでわかんねえんだよ、バカ」とディランは歌を投げつける。こんなに好戦的な「ライク・ア・ローリング・ストーン」が他にあるだろうか。ラフならタフに決まっている。「テル・ミー、ママ」もついに正式に音盤化されたわけだ。このステージの2ヶ月後ディランはバイクで事故る。ひとつのピークがここにある。

(『クロスビート』98年11月号)


『ボブ・ディラン』(62年)
 生き急いでいる男が攻め込んでくる。聴く側をアタフタさせてしまうデビュー作は言葉が痛くとがっている。まるでラップなアルバム。ギターも多彩。ディランは生まれながらの一人PE。

『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』(63年)
スーズ・ロトロとの仲睦まじいジャケ写は安定したディランを伝える。「風に吹かれて」、「くよくよするなよ」などヒット曲収録のグリニッチ・ヴィレッジの臭気漂う歌アルバム。名曲家ディラン。

『フリーホイーリン・ボブ・ディラン』
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