映画監督の松林要樹さんが、世界最大の日系人居住地でもあるブラジルでの生活をレポートしてくれる「未来世紀、ホボブラジル」第6回です。前回の連載では、以前ウルグアイのムヒカ元大統領に取材しようとして断念したことが明かされましたが、今回も実現されなかった企画についてのお話。しかも今度はブラジルでつい先日まで進めていた企画で、3年半かけて撮っていたアマゾンの河口の街・ベレンで暮らす福島出身の日本人女性への取材をやめることにしたといいます。その企画がどのように始まって、なぜ取材を中止する決断にいたったのか、その記録をベレンで撮影された写真とともに掲載します。
文・写真=松林要樹
この前に続いて没ネタについて。3年半近くブラジルで撮っていた福島企画が終わった。終わったというのは、撮影者(私)の主観的な判断で、撮影させてもらっていた方たちの人生や予定が終わったのではない。当面、企画を継続していく根気が失せたのである。今後、福島出身のある人物を追う撮影をやめるつもりだ。60年ぶりの一時帰国の過程を撮ろうとしていたが、3年たっても何も動かず、今後も動きが生まれる可能性は低い。結論を一言で書けば、映画の主人公としては優柔不断かつ気難しい。さらに撮影を通じて今後、人の感情の動きが生まれないと感じ、相応しいと思えなくなったのだ。
2018年12月号
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