大著作集『大音海』の編纂を兼ね、湯浅学さんの過去の原稿に書き下ろしの解説を加えて掲載していく「大音海の岸辺」第33回は、この半年で相次いで亡くなった3人の音楽家にまつわる原稿をお届けします。まず前編では、7月16日に78歳で亡くなったアラン・ヴェガ(スーサイド)と、11月7日に82歳で亡くなったレナード・コーエンに関する原稿計8本を掲載します。


スーサイド『スーサイド』



文=湯浅学


『スーサイド』

 スーサイドのようなバンドをやりたい、という声を78年ごろ俺のまわりでよく聞いた。77年にこのファーストが出たときには、身体の中の虫がぞわぞわと反応してよろこんでいるような内気な爽快感があった。暗いが憂鬱ではない。思いつめているよりも、死を身近に感じられることの軽々しい、たわけた気分に甘美なものを感じたのだ。虚しさを嘆かずに引き受けつつ燃やしていく。リズム・ボックスにエコーの効いた妙な音。『ハーフ・アライヴ』ではライヴと宅録でもっと生々しいスーサイドがわかる。併聴がよろしい。アラン・ヴェガの歌は耳にまとわりついてくる羽毛、あるいは耳ダレの如きものなり。

(『クロスビート』94年11月号)




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