
スーサイド『スーサイド』
文=湯浅学
『スーサイド』
スーサイドのようなバンドをやりたい、という声を78年ごろ俺のまわりでよく聞いた。77年にこのファーストが出たときには、身体の中の虫がぞわぞわと反応してよろこんでいるような内気な爽快感があった。暗いが憂鬱ではない。思いつめているよりも、死を身近に感じられることの軽々しい、たわけた気分に甘美なものを感じたのだ。虚しさを嘆かずに引き受けつつ燃やしていく。リズム・ボックスにエコーの効いた妙な音。『ハーフ・アライヴ』ではライヴと宅録でもっと生々しいスーサイドがわかる。併聴がよろしい。アラン・ヴェガの歌は耳にまとわりついてくる羽毛、あるいは耳ダレの如きものなり。
(『クロスビート』94年11月号)
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