boidマガジン

2017年01月号 vol.3

樋口泰人の妄想映画日記 その25

2017年11月10日 16:18 by boid
2017年11月10日 16:18 by boid

boid社長・樋口泰人による2016年12月21日~31日の業務日誌ときどき映画&妄想日記。年の瀬の街の盛り上がりや人混みにうんざりし、仕事が収まらなくても、2016年の終わりがやってきました。終わらない仕事に気が遠くなったり、耳鳴りに悩まされながらも、レコードを聴きながらお手製ラーメンを御馳走になった忘年会や久しぶりの家族での外食など、いい音楽と美味しいものを味わうことはできたようです。




文・写真=樋口泰人


 いつもなら年末に福岡爆音があってワイワイとするのはいいのだが東京に戻って来ての慌ただしさにうんざりで、今年は福岡が10月に移ったので少しゆっくりできるのかと思ったら全然そんなことはなかった。やっぱりダメな人はダメである。だいたい人が盛り上がるときは嫌いだし人混みは嫌いだしこの時期はいつもどうやり過ごしたらいいのかうんざりとかいっているうちに年が明ける。毎年同じである。福岡がなくてもダメなら、あったほうがまだマシであると、陰ながら来年の福岡年末開催を願う。耳鳴りがひどく映画がまったく観られなかった。


12月21日(水)
午前中、某社にて来年夏の企画の打ち合わせ。気が遠くなる。
午後からは『PARKS パークス』の宣伝打ち合わせ。気が遠くなる。
ロウ・イエ『ブラインド・マッサージ』。まるで盲目の人になりたがっているようなカメラに、いきなり驚かされる。観るのではなく耳を開くのだ、いや、身体に触れるのだという宣言が冒頭から。詳細は映画コムにて。
身体に触れる、ということについては書ききれなかったのだが、触覚的な映画という意味ではジェシー・アイゼンバーグとイザベル・ユペール、ガブリエル・バーンの『母の残像』と2本立てにするといいかもしれない。映画を通して自分の身体が開かれていく、自分という輪郭が緩んでいく。あらゆるものが「残像」としてそこかしこに遍在するようになる。わたしでありあなたである何かとしてわたしが緩やかに変容していく。


12月22日(木)
吉祥寺に新しくできる「ココロヲ・動かす・映画館○」という奇妙な名前も含め、話題の映画館のオーナーとスタッフに会う。オーナーもまた樋口さんという。そして私に連絡をくれたスタッフは、なんと、boidにもめちゃくちゃ近い某バンドの某氏の娘さんであった。まあ我々の年齢からしてそんなことが起こっても不思議ではないのだが、実際に起こってみるとさすがに愕然とする。今度の4月から我が家の姫も某社にて働き始めるのだが、どこかでそんなことが起こることになるのだろうか。
そういえば、15日にヨーロッパから帰って来た姫は、17日だったかからスノボをしにどこかに出かけ、20日に戻って来て、本日からアメリカに行った。一体どうなっているのだろうか?
夕方は牧野貴くんがやってきて、3月に庭園美術館で行う2日間の上映とライヴの企画について。次々に新しい試みにチャレンジする牧野くんのエネルギーにはいつも驚かされるのだが、今回もまた、初めての上映方法が試される。何かを作る、何かを映すというよくぼうとは別の、映された何かに全身を犯されたい、みたいな欲望がそこにはあるように思える。自分の観たい映画を作るのではなく、予想もしえぬ何かに自身が貫かれるために何かを作ると言ったらいいか。つまりそこにあるエネルギーは個人のものではなく、映画のエネルギーだから、終わりはない。


12月23日(金)
この1年、送付されて来た映画のサンプルDVDの片付け。すべてを観ることはできないしすべてを手元に残しておくこともできないし、返却すべきものは割とまめに返却してもなおかつこの量が残るわけだから、あとは心を鬼にするしかない。こんなことならDVDではなくvimeoか何かの配信で送ってほしいとも思うのだが、案外それだと観るのを忘れるというのも実感としてある。慣れの問題なのだろうか? 試写のお知らせなども、知り合いからの連絡でない限り、メールなどでのお知らせだとすぐに忘れる。

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