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2017年01月号 vol.3

大音海の岸辺 第34回 前編 (湯浅学)

2017年01月22日 11:24 by boid
大著作集『大音海』の編纂を兼ね、湯浅学さんの過去の原稿に書き下ろしの解説を加えて掲載していく「大音海の岸辺」。今回は間が空いてしまいましたが連載第26回(2016年3月号)に続き、日本のアーティストの作品をまとめて取り上げます。90年代に書かれた原稿の中から名前が「か行」で始まるアーティストの原稿を集めました。前編ではミッキー・カーチスさんのデビュー40周年記念ライヴ評と、勝新太郎さんにまつわる4本の原稿を再録します。


『歌いまくる勝新太郎』



文=湯浅学


LIVE/ミッキー・カーチス(1994年10月30日、中野サンプラザ)

 俺はミッキーさんが司会をしている「ザ・ヒット・パレード」を見ていた。サムライのころ果敢に海外進出するミッキーさんを凄い人だなと思っていた。デビュー40周年だという。その記念公演があった。
 堺正章のなめらかな司会で、様々なゲストが入れかわり立ちかわり登場する、バラエティ・ショーである。メインは、今やジャズ・シンガーであるミッキーさんとラムバンドの歌と演奏。なにしろ交遊関係が広いうえに40周年だから、それはそれは楽しいショーである。ホールのロビーに飾られたオリジナルのバイクや、多くの人から送られた花束、記念の品々に、日本のロック史におけるミッキーさんの役割について改めて考えさせられ、またまた感服つかまつったりした。矢沢永吉からの花に「そういえばキャロルのプロデュースもやってたよなあ」とか。「シーナ&ザ・ロケッツやユリ・ゲラー、左とん平、外道とかガロもそうだったっけ」と連想ゲームのように思い出されてしまい、プログラムを購入して資料部分に、一部と二部の休憩時間に見入ってしまったのだった。
 アーカンソー・ファッツの堂々たるブルース、山下敬二郎夫妻のカントリー、裕也さんはもちろんロックンロールなどでなごみ、澤村美司子さんの腰の入った歌に感動させられたり。裕也さんがダンサー付きで激しいアクションをキメまくっていたのはさすがであった。ミッキーさんは、第一部ではやや押さえぎみに要所要所をシブくキメていた。
 第二部は、いきなり鼓の大倉正之助が登場。皆少なからず驚く。実は大倉は大のバイク好きで、そこからの交友だそうです。大倉のソロの後、なんと六本スティックの金大煥、ラムバンドのジミー・スミスのドラムス、内潟慶三の能管と大倉の四人によるインプロヴィゼーションがあり、さらに客席は驚く。スモーキー・マウンテンや地引慶子、ミッキーさんとはミュージカルで共演している島田歌穂、さらに前田美波里は踊りでお祝い、と実に盛りだくさん。しかし軽い物腰でキリリと歌う、ミッキーさん流のジャズが結局は場内をあたたかい空気に包み込んだ。最後には中野サンプラザが六本木ピットイン化していたのだった。

(『ミュージック・マガジン』95年1月号)


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