『歌いまくる勝新太郎』
文=湯浅学
LIVE/ミッキー・カーチス(1994年10月30日、中野サンプラザ)
俺はミッキーさんが司会をしている「ザ・ヒット・パレード」を見ていた。サムライのころ果敢に海外進出するミッキーさんを凄い人だなと思っていた。デビュー40周年だという。その記念公演があった。
堺正章のなめらかな司会で、様々なゲストが入れかわり立ちかわり登場する、バラエティ・ショーである。メインは、今やジャズ・シンガーであるミッキーさんとラムバンドの歌と演奏。なにしろ交遊関係が広いうえに40周年だから、それはそれは楽しいショーである。ホールのロビーに飾られたオリジナルのバイクや、多くの人から送られた花束、記念の品々に、日本のロック史におけるミッキーさんの役割について改めて考えさせられ、またまた感服つかまつったりした。矢沢永吉からの花に「そういえばキャロルのプロデュースもやってたよなあ」とか。「シーナ&ザ・ロケッツやユリ・ゲラー、左とん平、外道とかガロもそうだったっけ」と連想ゲームのように思い出されてしまい、プログラムを購入して資料部分に、一部と二部の休憩時間に見入ってしまったのだった。
アーカンソー・ファッツの堂々たるブルース、山下敬二郎夫妻のカントリー、裕也さんはもちろんロックンロールなどでなごみ、澤村美司子さんの腰の入った歌に感動させられたり。裕也さんがダンサー付きで激しいアクションをキメまくっていたのはさすがであった。ミッキーさんは、第一部ではやや押さえぎみに要所要所をシブくキメていた。
第二部は、いきなり鼓の大倉正之助が登場。皆少なからず驚く。実は大倉は大のバイク好きで、そこからの交友だそうです。大倉のソロの後、なんと六本スティックの金大煥、ラムバンドのジミー・スミスのドラムス、内潟慶三の能管と大倉の四人によるインプロヴィゼーションがあり、さらに客席は驚く。スモーキー・マウンテンや地引慶子、ミッキーさんとはミュージカルで共演している島田歌穂、さらに前田美波里は踊りでお祝い、と実に盛りだくさん。しかし軽い物腰でキリリと歌う、ミッキーさん流のジャズが結局は場内をあたたかい空気に包み込んだ。最後には中野サンプラザが六本木ピットイン化していたのだった。
(『ミュージック・マガジン』95年1月号)
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