
GLASアニメーション・フェスティバルにて。湯浅政明監督とサイエンスSARUのチェ・ウニョンさんと
アニメーションに風が吹く
文=土居伸彰
3月上旬、約2週間アメリカに行ってきた。サンフランシスコとバークレーに1週間、ロサンゼルスに1週間という日程。バークレーのGLASアニメーション・フェスティバルに参加するのが主な目的だ。
昨年の様子は一年前のこの連載で書いたので繰り返しになるが、情報のためにいちおう基本情報を。GLASアニメーション・フェスティバルはジャネット・ボンズというアニメーション作家が中心となって立ち上げた若い映画祭で、今年で二回目。ジャネット・ボンズはアメリカを代表するアニメーションスクールであるカリフォルニア芸術大学(ウォルト・ディズニーが作った通称「カルアーツ」だ)の実験アニメーション学科出身(産業向けの人材を輩出するキャラクター・アニメーション学科とは異なり、個人作家の育成に定評がある)で、この映画祭自体がその卒業生たちを中心としたコミュニティで成立している。「小ささ」ゆえに成立する妥協のないしっかりとしたプログラム選定が魅力的だ。
ボンズとは毎日のようにFacebookメッセンジャーでやりとりをしつつ、フェスティバルディレクターのニューカマー同士、慰めあったり鼓舞しあったりしている。実際、新千歳とGLASはテイストがとても似ている。それは、日本とアメリカのアニメーション状況が似通っていて、それゆえに問題意識も似たものになりがちなゆえだ。ヨーロッパのアニメーションシーンは助成金に依存している部分があり、それゆえに存分に「ゲージュツ」できる。だが日本とアメリカにはそんなものはない。ヨーロッパを中心としたアニメーション映画祭はそれ自体として独自の評価基準を持っていて、それは必ずしも日本やアメリカにとってアクチュアルかといえばそうではない。日本とアメリカでは自分自身の表現を守るためには、知恵を絞って、自らの手でサバイバルしなければならず、アニメーション映画祭はそのアシストをする役割を持たねばならない、というのが、二人が共通してもっている意識だろう。
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