
文・記録=ヒスロム
写真=内掘義之
2月6日(月)〜11日(土) 高山建築学校にて
軽自動車を2ヶ月レンタカーし、できるだけ荷物を選び抜くが、車はパンパン。京都から出発。
どんどん雪景色に変化していく。車はまったくスピードが出ない。1車線の道で後ろに他の車を詰まらせながら、高山建築学校、岐阜県飛騨市の数河峠へと向かう。日本でも有数の豪雪地帯で周囲には多くのスキー場があり、昨年ヒットした映画、新海誠監督「君の名は。」の舞台にもなっている地域。
ヒスロムは建築家の岡啓輔さんに誘われ、2015年からここに来るようになり、昨夏、ヒスロムの大事な1本の木の根っこ部分をコンクリートで制作し、土の中に埋めた。(ヒスロム日記、第13回高山建築学校参照)
これから、雪で見えなくなった埋めた場所を探し当て、雪を掘り、土を掘って。しっかり固まった根っこと、その型枠を取り出す。
その後、掘り出した根っこを持って、青森の八甲田へと移動する。約1ヶ月半、冬国での制作、生活。
建築学校の隣に住む、宮田保さんに挨拶に行き、雪かき道具、雪用のスコップとスノーダンプを借りて、岡さん、ヒスロム、ボリさん。保さんで、雪に埋もれた建築学校までの道を造る。
高山の雪はふわふわで柔らかい。しんしんと雪が振る。1メートル50センチは積もっている。
様々な人が造った、建築物、造形物は全て見えない。もっこりと、雪がユニークに積もっている辺りは何かがあるのだろう。
仙台から林剛平さん一家が軽トラで来た。2人乗りなのに剛平さん、奥さんのゆりかさん。子供のたよう(太陽)と屋久島の屋久犬のむぎ。
大人2人、子供1人、犬1匹。これで仙台から岐阜まで下道。
この冬の生活に備えて、薪を造って準備してくれた、山口ゆうきさん到着。
後にゆうきさんの幼なじみ、宮さんが来る。20年振りに、ゆうきさんに会いにはるばるここまで来た。
前に別れた時、自分がどんな人生を歩か、決心したら会って話すんだと決めていた。 たまたまだけれど、今回がその時なんだよ。と宮さん。じっくりゆっくり話せるまで、僕も皆とここに居ます。
雪に覆われた、古い木造家屋で薪ストーブ。なんだか、時代、時間が分からない。特別な場所での生活が始まった。
夏、埋めた場所にはポイントを付けていなかった。
この辺りちゃうかな!?各々予測するポイントへ、にんじんを投げる。
夏の記憶、見えなくなった風景を思い返す、雪がなければ?あの木があそこで、これが、あれやし、だからあそこか点。
風景の変化、見え方は想像を越えていて、分からない。とりあえず、だいたいの範囲を決めて雪を掘り出し始める。
白。雪。雪、掘る。掘る。地面に置いた目印が見つからない。何か、出て来た。でかい石。この石、なんか見覚えある。
これが、あるってことはこの辺り。いや。見当たらん。違う石かな。地面が出ても、白い雪で直ぐに隠れてしまう。
白、茶色、黒色。茶色の範囲を広くしていく。翌日。昨晩から30センチは積もった。全部、白に戻る。
掘ったのに埋まる。また掘る。茶色を増やす。雪振る。ゆっくりとまた白く変わる。
でっかい氷柱を舐め回しながら早稲田建築学生2人組、松木と高野たいきがやってきた。
昨夏、彼らと一緒に、夜中から朝までコンクリート錬って、根っこを埋めた。
やっと見つかったで。この下にあるはず。こっからは速い。どんどん進む。
これ、ほんまに木の根っこ?自分たちで造って置きながら、雪の下から土の下から掘り出したこの物体は、巨大な隕石に見えてくる。
総勢、12名と犬1匹。
薪ストーブを囲む。食事に必須なのは、宮田保さんが作る、七味唐辛子。たもっちゃん南蛮。
これはけっこう辛い。何にでも入れられて何でもその味に寄り添う。様々な乾燥させた素材が入ってる。
雪国の人は自家製の食べ物を多く造っている。軒先には色んな食材が干してある。
しかし、寒い。焚き火スペースをもう1つ造る。竹は煙が出なくて赤く良く燃える。ゆうきさんは火起こしのスペシャリスト。独自の火付け方法で火種に息をピンポイントで勢い良くあてる、指使いを取得している。
その方法を教えてもらう。竹の内側にあるとても薄い皮は、焚き火の蒸気でふぁっと舞い上がる。高山の雪みたいにゆっくり落下してくる、火の近くに来るとまた蒸気でスーっと、黒く大きな梁がある天井まで上がる。
これを見て4歳になる、たよう(太陽)は「魔法のじゅうたん」と名付けた。
皆で巨大な固まりを揺らしながら、遊びながら。根っこの型枠をはずす。
ボロボロ型枠が取れていく。ぼんやり根っこの形が見えて来た。
これでやっと、造成地で切り出したなんでもない杉の木が一本になるはず。
昨年、秋に八甲田の牧場に置いた、根っこの上の部分。
木の先っぽまでの生木を雪の中から全部、掘り出せれば。
読者コメント