
文・写真=梅田哲也
わりと長いことここに立ってるな、と我に返ったのと同時に、ヨー!と若者に声をかけられた。ここ、バスこねえよ。もうずっと止まったままだ。ほらな、とバス停の看板をひっくり返すとそこには赤インクで大きなバッテンがついている。兄ちゃん、どうやってここに来たんだ? ここでアジア人に会うのは珍しいぜ。知ってるか? このへんはいろいろ問題を抱えてる地域だ。どこに行きたいのかきかれたので、でっかい公園で友達と待ち合わせしていることを伝える。スタジオを出る前に行き方だけをgoogleで調べてきたので、知ってるのはそこに向かうバスの番号と、バス停の位置だけだった。公園の名前もおぼえていない。この方向ででっかい公園はふたつあるぜ。どっちだろうな。なにかほかに情報ないか? といいながら僕を地下鉄のホームまで案内して、きっとお前が目指してるのはここだろうと、乗り換えの駅の名前と、行き先を教えてくれた。途中、乳母車をホームに降ろすのを手伝いながら、俺はボクサーなんだ。お前はカンフーできるか? と聞くので、カンフーは中国、日本は空手の国だよ、とこたえると、カラテ!知ってるよ、と言って正拳突きのような動きをする、名前もしらないままの若者
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