
雨上がりで増水している広瀬川
日本の「サイレント・マジョリティ」
文・写真=風元正
いいものを見た。6月26日、藤井聡太4段の、29連勝がかかった増田康宏4段との対局開始時、部屋の隅でちょこんと正座していた佐々木勇気5段の白皙の貌である。今後、ずっと対戦が続くわけだから、敵愾心を養っても意味は薄い。ただ、目前の「藤井フィーバー」に対し、大きく目を見開いて好奇心全開、何が起こるのか全部確かめておこう、という態度。記者会見まで残り、6日後の自身の対局に向け、「連勝を止める気で臨みます」とコメントして、見事有言実行を果たした。長年の将棋ファンとして14歳の天才棋士の登場は喜ばしいことだが、当然、連勝はいずれ止まる。こちらもタイトル戦の登場が確実視されている22歳の気鋭・佐々木5段がストッパーとなり脚光を浴びたことは、藤井4段の最初の対局相手が引退目前の加藤一二三9段だったのと同じく、天の計らいだろう。
藤井4段の、神谷広志8段の連勝記録を更新した対局は、53桂という異筋の妙手が出た充実した内容だったし、連勝が止まった対局の、佐々木5段のスピード感溢れる隙のない指し回しもまた見事だった。どちらも私の如きロートルには手が出ない落とし穴満載の戦型で、AIと人間が共棲する新時代の到来を告げる名局だろう。「勝負メシ」などどうでもよろしい。
2017年7月2日は、都議選で自民党が大敗し、大きな転回点となる1日となった。やっぱり、21世紀は何が起こるか分からない。
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