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2017年07月号 vol.2

樋口泰人の妄想映画日記 その43

2017年11月10日 16:36 by boid
2017年11月10日 16:36 by boid

boid社長・樋口泰人による6月21日~30日の業務日誌ときどき映画&音楽&妄想日記です。デヴィッド・ボウイ作品オールナイト上映のために京都へ、そして初爆音上映のために名古屋へ。ハードなスケジュールだった爆音調整の全作品のメモも。新たに買いなおしたノートパソコンとの相性は良いようです。




文・写真=樋口泰人


あまりにいろんなことを忘れるので、日記もできる限り早く書くようにしているのだが、早く書こうとすればするほど忘れている。いや実際には早かろうが遅かろうがほぼすべてを忘れていて、忘れたところから立ち上がる「あったかもしれないがなかったかもしれないおぼろげな記憶」は、早すぎるとダメなのだということがなんとなくわかってきた。何もない記憶と共に生きる時間があってこそ、そこに記憶が生まれる、ということか。真っ白なスクリーンにどこからともなく投影される他人の映像を観るように自分の記憶を観る。その時点で自分の記憶であろうが他人の記憶であろうがどちらでもよくなっているのだが、同時にますます人でなしになっていくのだろう。



6月21日(水)
雨が降っていた。梅雨の雨というより南国の雨のようなバシャバシャと降る雨だった。本来ならこの時期に公開する日記にはタイトルも書けるはずの映画の公開に向けての打ち合わせを行った。まあ、その後の作業が遅れているということなのだが。9月はじめの公開。ヒントはアンビシャス・ラヴァーズ。と言ってもわかる人はほとんどいないかと思う。もちろん先日まで来日していたアート・リンゼイ自身には関係ない。 そういえば4月に行ったアンドレイ・タルコフスキーの映画のムジーク・スピーカーを使っての上映の際、坂本龍一さんとのトークの中で記憶に残っているのが、雨の音をいかに録音するか、いやしかし雨の音とは何なのか、という話だった。そもそも雨自体に音はない。という話は以前の日記にも書いたような気がしてきた。いずれにしてもこの日の雨の音を、わたしがその時新宿の路上で聞いたように録音するにはどうしたらいいのだろうか? 例えばその音がうまく録音できたとして、わたしはその日その場の写真を見るように、その日の音を聞いただけでその場を想像することができるだろうか?

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