boidマガジン

2017年07月号 vol.4

特別座談会:Boris最新アルバム『DEAR』(Atsuo×河村康輔×田巻祐一郎×那倉太一)#2

2017年07月30日 23:09 by boid
那倉:今の話が印象的で、作業へのトータルな慣れを感じます。こういうこと言ったらアレですけど、自分の時給とか意識するときに、それこそウォーホル的なあれですよ。一つファクターを変えて再生産すればもう別の作品というか、「ズレ」を一つ産めば、一つ儲かるかもじゃないですけど、そういうような発想が二人ともすごくうまいなと。
Atsuo:まあどっちも仕事が早いよね。
河村:今回のTシャツなんて、こないだのFEVERでのライブの帰りの車中でその話を聞いて、吉祥寺に着く頃にはじゃあシュレッダーで全部やりましょうとなって、『DEAR』でフォントをもらったから、じゃあ同じフォントで「BORIS」と配置して送ってくださいって言ったら次の日の朝にアウトライン取られたものが送られてきて、その日の夜には全部俺がシュレッダーで仕上げて送るっていう。そこまでの時間って24時間くらいしかないですよね。
那倉:そう、そういうことが起きそう。
河村:速度は重要だと思っていて、ライブ・コラージュをやるのもその鍛錬に近いものがあって。ライブ・ペイントはその過程も見てもらいたいというのがあると思うけれど、コラージュは性質上、絵のように大きな動きがないから、結局スタートと完成しか見られない。俺はそれで全然よくて、下手したら誰も見なくてもいい。予め設定された締切りよりもさらに手前の締切りを設定したり、時間以外に制約のない状態で、作品を仕上げる練習の場として、そこで無意識でやることをどう仕事に活かせるか。そういう鍛錬を続けないと作品作りができないです。
Atsuo:「あり」「なし」の鍛錬だね。ずっと「あり」でいられる状況を続けられるか?という。意識でコントロールして作ればいつでも「あり」になるというわけではないもんね。パンっと素材を投げただけで「あり」になる瞬間もあったりするし、それを判断できるかどうかだよね。


『DEAR』 Tシャツ




『DEAR』 Tシャツ



小さな世界だけど異常にデカい

那倉:今回のTシャツを刷った田巻祐一郎さんも来てくれましたが、あのTシャツのクオリティも素晴らしかったですね。
Atsuo:版にする時の原画の加工とか入稿ってどうしてるの?
田巻:原画を見るとエッチングの解剖図のような素材が使われていて二階調にもなっているから大丈夫かなと思って、そのまま版屋さんに流してみたら全くダメなものが上がってきてしまって、結局は自分で加工しました。グレースケールで、黒と白の間みたいな色は確実に版というのは出ないわけじゃないですか。そこをどこまで網点で出すかというのがポイントでなんですが、やっぱり刷ってる人じゃないとわからないんですよね。これは抜けるな、これはプリントできるなという範囲が職人ならわかるんですけど、データだけ扱っている人にはわからないんで。あとそのデータを出してそのまま焼けばいいのかというのもまた別で。ちょっと近づけて焼いて、光で焼いてあげないと抜けなかったりというのがあったり。
河村:会う度に「本当にごめん」って何回も言ったよね。これはすごく集中して細かいコラージュにしたものの、よくよく考えたら最初からアートワークをTシャツにしようって言ってたなと。
Atsuo:シルクの版でどこまで再現出来るの?って話に後でなっちゃって。田巻くんにやってもらえなかったら危ないところだった。
河村:仕上がりを見て、この「A」の口の中のこのディテールが出ていたのが衝撃で。
田巻:だってよく見たらあるじゃないですか。これを潰さず出さないとダメだって思って。今回ラメ仕様の依頼もあり、油性インクは細部まで出るので油性でプリントしたんですが、いつもは水性でやってる会社なので、水性でできればよかったかなというのが少し残念ではありました。


『DEAR』Tシャツ細部

那倉:まさに職人の仕事が結集してる感じですね。今まではAtsuoさんが全部一人でやっていましたが、今回は他者が連れて来たイメージも作品に入っている感じがしますよね。ジャケットとかTシャツを担当している人たちが、BorisとENDONでは被ってる部分があるんですけど見え方の違いというのは、Atsuoさんと僕のディレクションの違いがあるのかもしれない。
河村:こっちもAtsuoさんに投げれるという感覚はすごくあるね。ここまでやったらあとはもう先輩お願いしますって投げちゃえれるというか。
Atsuo:ちょっと年上でいなきゃならない場面は増えたかも。
河村:下がみんなこんなだからね。ちょろちょろしているから。
那倉:うちら(ENDON)と仕事をしてるとちょっとみんな羽伸ばしながら頭おかしくなっちゃう感じがあるようで。
Atsuo:このあいだの河村くんの制作のコーラジュアニメPVが顕著でしょ。



那倉:そういう風に感情的に生活を送ってバンドとかやってると中二病のようなものの受けがどんどん良くなっているし、やる側もその人なりの中二病感を前景に出してくる芸風が多いなと思って。ノイズって、音としてノイズが好きで愛でるというのは中二病でもなんでもないんですよ。音楽ヲタなら普通にディスクユニオンのノイズ・アヴァンギャルドをチェックするようになるじゃないですか。メタル好きでもハードコア好きでも一定数いるじゃないですか。クラシックの路線からいく人もいるし、それ自体はマニアであって、中二病感はないんですけど、今回『DEAR』も中二病感を感じて、なんていうのか思春期感なのかな。ドクロ全面でどやっと見せるような。
河村:音にも完全にその感じがある。
那倉:avexから出た『New Album』と『DEAR』を対比させると、『New Album』は最近のBorisの中では最も実験の射程距離が広い作品だと思うんですよ。『New Album』って流通とかジャケットの雰囲気とか「面(つら)」は一番実験していない印象を受けるかもしれませんが、そのプロセスと作業ということでは最も実験した作品だと思うんですよね。『DEAR』はそれとは反対の方向へミニマルに骨太にやっているように見えました。Borisには実験のバンドというイメージもあるじゃないですか。今回のアルバムでは、実験はある種の創意工夫というレベルで組み込まれていて、これまでの実験とは別に見せたいものがあるんだなと。そこで透けてきたものが僕の言葉で言うと中二病感なんですが。本性が出ているのも無論ありますが、今のムードでもあるのかなとも。


Boris 『New Album』ジャケット


Atsuo:割と今回はギミックに見えるようなものは意識的に排除はして。当初は3枚組の構想もあったけど、それもギミックに見えちゃいそうで嫌になって、シンプルに1つのアルバムに収めることになった。25周年ということもあり、大人のものづくり、自分たちの営みがそのまま作品になっているようになればと。いつの間にか大人になってしまっているけども、自分達にしか出来ない事って何か?って今一度見つめる事も出来たね。同時に俺たちだけじゃなくて次の世代と仕事をしてバシッとしたものを見せたいというのはあった。
那倉:それで今回、こういうドクロとか死のイメージを使っているのが、すごくロック史的な振る舞いだなと思いました。ジャケットだから顔でもあり、すげえ強い鬼瓦みたいな頼もしい感じもあって。ロックとかメタルとかいうものの延命措置をしていきたいという欲望が多分僕とAtsuoさんには共通してありますよね。突如B.C.Richの「Warlock」を買ってみたりとか。メタルバイブス足んねえなと思ったら注入するとか。メタルシーンって基本的にダサいもので、その中で生きていこうというのはないんだけれども、自分たちの中での喪失したくないメタル感というものがあると思うんです。
Atsuo:よくわかってるね。「Warlock」じゃなくて「Warbeast」なんだけども「Warbeast」って名前だけで中二病だからね。自分たちの中二さというのは利用しているかもしれないね。こないだ那倉くんとNOVEMBERSの小林祐介くんと対談してもらったけど、多分ENDONもNOVEMBERSもB.C.Rich使えないと思うんだよね。
那倉:好きですけど使わないですね。例えば、ビザールギターもそうですが、巨大なメカってなんかでかくてすげえとか、ツノいっぱいあってすげえとか、ネットとかの反動で実際に壮大なものに感動してしまうという動物的なロジックではなく何かしらの過剰性に萌えを希求するところが中二的な感じで。
河村:ネットがここまで生活の中心になっちゃったってのがあるよね。パソコンの画面から始まって、それがスマホになってどんどん小さくなっていって、この手のひらの中で世界の中心を動かせるように思えてきて。
Atsuo:この小さい画面ですごくデカいものとか、すごくうるさいものとか、そういうのがあれば。
那倉:世界変わりますよね。
河村:最初パソコンでMP3に変換した音源をスピーカーを通して聞いていたものが、この間のUNITでのレコ発の音量は人が酔っちゃうくらいでかかった。それはかっこよくて、巨大ロボットと同じ感覚というか。画面ではそのロボットの足元で写っている人との対比でサイズ感を捉えていても、自分がそのロボットの下に立つと想像以上に巨大なロボットだったみたいなのが今回のライブで感じたものに近いものがある。
那倉:確かにBorisを巨大ロボ的なデザインと見る向きは説得力ありますね。
河村:ちっちゃい世界なんだけど、異常にデカいみたいな。やっぱ現場行かないとわからないものをものすごくわかりやすく見せられた感じはある。


Boris UNITでのライブ(Photo by Miki Matsushima)



現場を自分の住処にする

那倉:Borisもそうですけども基本的にENDONもVJを入れたとして、どこでやっても自分たちのライブの雰囲気になるように、いわば強引にしているわけじゃないですか。Borisはそこらへんは強いですよね。音もそうですが、自分たちのライブ空間というのを演奏の為の気迫とかではなく構造を持って来て作り上げてしまう。
Atsuo:ハコの特徴を無くしたくてスモークを使ったりね。スモークによって会場の壁や突き当りが見えなくなることで無限の空間となる。それと同時に孤独感も生まれるのがスモーク。


Boris UNITでのライブ(Photo by Miki Matsushima)


河村:確かに真っ白すぎてどこにいるのか分からない感じ。
Atsuo:ずっと地響きしているしね。
那倉:さっきのスマホの話もそうですけど、どのメディアに露出するコンテンツかということで規定される部分が大きいじゃないですか。スマホでしか見れない映画やドラマとかだったら引きの絵が減るとかね。ライブもやるってなった時に会場とシチュエーションをまず自分たちのメインとする音楽以外も含めて考えるのは大事ですよね。
Atsuo:ここ数年ってENDONもやってたけど、スタジオライブとかリアルな方向で「場所」を作ることが増えたよね。ファンタジーとしての「場所」を作るのはなかなか難しい。
河村:現場をどう自分のところへ引き寄せるかみたいな。それは重要ですよね。現場を自分の住処にするというか。
Atsuo:河村くんの2つの展示『FACTORY』ともう一つ『Consume』を見たんだけど会場が全く違うからすごく面白くて。こないだのは意識的に河村くんもデカい作品を作っていたし。
河村:『FACTORY』は全体的にこじんまりと工場パーツ的に細かくまとめる展示をして、『Consume』の方は異常に作品のサイズがデカいという。中間を全く作らない感じで。
那倉:展示のコンセプトは自分で決めてるんですか?
河村:いつも自分で決めてるけど、それもノリですね。コンセプトを決めて作品作りをしないので、その時のやりたいものを一つだけ作って、自分の中で面白かったらそこからどんどん広げていくんですよね。
Atsuo:無意識の自分や作品が教えてくれるってことね、方向性を。
河村:展示が決まっていても、1点作るまでどうしたらいいか分からないから、毎回タイトル付けたり、リリース出すのがすげえ遅れるんですよね。ギリギリまで。
Atsuo:しかも情報をアーカイヴしていかないから、正体不明だと思うんだよね。調べてもホームページも途中で情報更新されてなかったりとか。


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