boidマガジン

2017年08月号 vol.1

《FLTMSTPC》 第31回 (松井宏)

2017年08月05日 18:39 by boid

FLTMSTPC=「Fais le toi-même si t'es pas content=満足できないなら自分でやっちゃえ」。製作、批評、翻訳と様々な方法で映画と関わっている松井宏さんが「カイエ・ デュ・シネマ」の記事などを起点に、映画を作る/見せる/観ることについて探る連載が久しぶりの登場です。今回、松井さんが紹介してくれるのは9月に公開される映画『汚れたダイヤモンド』(アルチュール・アラリ監督)に主演する俳優、ニールス・シュネデールについて。「カイエ」732号に掲載された彼のインタヴュー記事などから、映画における俳優の仕事の様々な側面について考えていきます。





俳優もろもろ
その1:ニールス・シュネデールという俳優の言葉から



文=松井宏


 最近やっと『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』(16/パブロ・ラライン監督)を見たり、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(16/ケネス・ロナーガン監督)を見たりして、ナタリー・ポートマンやケイシー・アフレックって本当にすごいと、阿呆みたいに思った。どちらももちろん、作品自体もとてもおもしろいのだけれど、やっぱり俳優の演技というものが作品にとってどれだけ重要かと、あらためて思わされる次第であった。もちろん彼らの演技は彼らのものだけじゃなく、監督やスタッフたちや、あるいは共演者との共同作業によってできるものなのだ。仮に現場で「良い演技」が起きているとしても、それをとらえる側次第では、「良い演技」としてお客さんに届かないことだって多々あるだろうし……。まあでも、やっぱりポートマンでなければ『ジャッキー』はあんなに良い作品にならなかったし、ケイシー・アフレックでなければ『マンチェスター』はあんなに良い作品にならなかったと、断言できる。
 それともう1本というか、もうひとりというか、9月公開予定のアルチュール・アラリ監督『汚れたダイヤモンド』(16)で主人公のピエールを演じている、ニールス・シュネデール。このひともものすごい良くて、グザヴィエ・ドランの初期作2本に出ていたらしいのだが、ぼくは見てなくて、今回はじめて彼を発見した。『汚れたダイヤモンド』でセザール賞・有望若手男優賞(新人賞)も受賞している。

「うれしかったのは、なによりもこの作品で受賞できたこと。『汚れたダイヤモンド』はアウトサイダーだった。他のノミネート作品はどれも40万人動員レベルのものだったからね。『汚れたダイヤモンド』は、公開後すぐは苦戦したけど、各媒体の批評が良くて、その効果が大きかった。ぼく自身のフランス映画における立場もアウトサイダーなんだ。中心から外れた作品によって、こうして賞を獲って中心になったということが、なによりうれしい」

 ニールス・シュネデールはパリ生まれだけど8歳でケベックに渡っていて、ドランの映画などに出たのちに、またパリにやってきて俳優活動をしているのだという。だから「アウトサイダー」というわけなのだが、そんな彼のインタヴューが載っている「カイエ・デュ・シネマ」732号(2017年4月号)は、「フランスの若手俳優たち」と題された特集を組んでいて、シュネデールだけでなく何人もの「フランス若手俳優」たちのインタヴューが載っている。そして正直言うと、全然知らない名前がたくさんあった。うーむ、そりゃあそうか、まあ当然か……。
 それはそれとして、シュネデールである。現在29歳。日本のプロ野球で活躍した選手がメジャーリーグのチームに移籍して、新人賞を獲る、みたいな感じか。まあよくわからないが、日本ではけっしてもう「若手」とは呼ばれないだろう年齢のこの俳優の言葉が、なかなかにおもしろいのである。

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