
『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』
文=湯浅学
ジョン&ヨーコ/プラスティック・オノ・バンド『サムタイム・イン・ニューヨーク・シティ』
一度認可されたビザの延長が急に取り消され、ジョンはアメリカ出入国管理局との闘争に入る。背後には、ジョンを政治的危険分子と見るFBI当局が暗躍していたともいわれる。本作が制作された72年(発表は9月)は、ジョンにとって平穏なときではなかった。
スタジオ録音とライヴ録音をそれぞれ1枚ずつの2枚組。プロデュースはジョンとヨーコ、それにフィル・スペクター。スタジオ録音のほうは、サウンド的には前年の71年12月に発表されたシングル「ハッピー・クリスマス」とほぼ同様で、スペクター色がほどよく出ている。厚みがあって力強い。ストリングス・アレンジも冴えている。ジョージの『オール・シングス・マスト・パス』と並んで、70年代のスペクター作品の代表作に挙げたいものである。
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