
カメハメハ大王が叫ぶとき
文=鍵和田啓介
「ロックンロールは今にも息絶える。お前はその断末魔の叫びを聴くことになるだろう」。ベテランロック評論家のそんな予言に対し、評論家志望の少年は怒るわけでも悲しむわけでもなくこともなげに応える。「だったら、僕はせめてそれを聞き届けるよ」。
『あの頃ペニー・レインと』におけるこの少年の台詞は、同作の監督であるキャメロン・クロウの映画全体を貫く基本構造を言い当てている。というのも、彼は「叫び」が「沈黙」へと向かうその瞬間を必ず描いてきたからだ。そんな瞬間こそが、最もドラマチックなのだとでもいわんばかりの映画ばかり撮ってきたからだ。
実際、飛行機の離陸時に叫びそうになるアイオン・スカイの口をジョン・キューザックが接吻でふさぐ『セイ・エニシング』をはじめ、「シャラップ!」と軽く呟いたトム・クルーズがその場を文字通り凍りつかせてしまう『バニラ・スカイ』、あるいは、うるさいガキどもをキルスティン・ダンストがある画期的な方法で黙らせる『エリザベスタウン』などなど、彼の作品の名場面を思い起こしてみればそれは明らかだろう。
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