カーネーションの直枝政広さんがオーディオの工作や改良に奮闘する日々の中で出会った音について綴る『宇宙の柳、たましいの下着』放浪篇です。知人から新型ヘッドフォンのモニターを頼まれたのをきっかけに、これまでに使ってきたヘッドフォンやマイク、カセット機材の思い出が蘇ります。そして直枝さんにとって別格のコンデンサ型ヘッドフォン(イヤー・スピーカー)から聴こえてくる音とは――



Taste of Sound


文=直枝政広


 知人からFOSTEXの新型ヘッドフォンT50RPのモニターやりませんか? という連絡をいただいた。ヘッドフォンにはもちろん興味があるので是非と返事をすると、まもなくメーカーから大きな箱が事務所に届いた。こんなことでもないと馴染みの個体ばかりに頼ってしまうから、たまには気分を変えてみるのもいい。


 自宅でのDAW作業用にはAudio Technica ATH-A9Xを使っている。馴れもあるが、密閉式で音に無駄な演出がないからフラットで、ジャッジに困る事は少ない。何より飽きがこないところが最高だ。もう15年以上、イヤーパッドも交換しつつ愛用しているが、いまだ現役である。もうひとつはオープンエアー設計のATH-AD10。こちらは主にリスニング用でこれ以上なく気持ち良い音を楽しめる。こちらのイヤーパッドはふんわりと柔らかく、装着したとたんに身体の力全体が抜けるほどの優しさがある。それらと出会う前に1990年代を通して使っていたのがFOSTEX(型番不明)だった。DJブーム直前に発売された商品だったが、思っていたほど低域に癖がなく、音が作りやすかったこともあって、ぼろぼろに壊れるまで使った。だから新型のFOSTEX T50RPを見た瞬間、妙な懐かしさを覚えた。特徴的なごついフォルムも健在だ。ミニ・プラグ用と標準用の付属ケーブルが2種類あり、用途によってL側の端子にそれぞれをはめ込む仕組みになっている。何枚もCDをかけてエージングをしてゆくと硬めだった音にも伸びが出て来た。出力は他のものにくらべると低めだが。分離は良く、高低域のどちらにも程よい抜け感がある。低域の輪郭がぼけないのもいい。きりっとした音のクリアさが特徴と言えるだろう。そしてみかけによらず軽量でフィット感もいい。スタジオで定番のヘッドフォンと言えばSONYのMDR-CD900STだが、軽量ゆえ頭からずれやすいという欠点がある。このT50RPならその心配がないだろうし、何より程よい密閉感で音に集中できそうだ。リスニングにもいいが、ぼくは音楽制作用としてスタジオで使ってみたい。

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