boidマガジンでは今後も数回に渡って黒沢監督にインタヴューを行っていく予定ですので、どうぞご期待ください。

聞き手=樋口泰人
写真提供=ビターズ・エンド
――ここ2~3年の動きを含めたお話を何度かに分けて伺っていければと思っているんですが、昨年、フランスで製作した映画が遂に日本でのタイトルも発表されましたね。
黒沢 今やっているフランス映画は仮題で『銀板の女(La Femme de la plaque argentique)』といっていますがフランスでのタイトルはまだ決まっていなくて……。日本では『ダゲレオタイプの女』というタイトルで今年の秋に公開される予定です。
――公開はフランスのほうが早いんですか?
黒沢 わからない(笑)。ある程度決まりつつあると思うんですが、日本とは公開のシステムがだいぶ違っていて、いつ公開するかに関しては割と悠長なんですよね。まだどうなるか全くわからないんですが、映画祭に出るかどうかというのも関わってきますし。仮に『ダゲレオタイプの女』がカンヌに行くとしたら、その直後の6月に公開するのが一番いいわけですが、それを劇場の人がちゃんとわかっていて「じゃあ結論は4月まで待ちましょう」と言ってくるんです。日本の場合は遅くとも半年前には劇場を押さえなければいけないので早々に公開日を決めるんですが、フランスはもっと自由なようです。状況に応じてプログラムの組み換えがしやすい。だから、直前まで確定しなくてスリリングな部分はあるでしょうけど、一番いいタイミングで公開できるという部分はあると思います。
――『ダゲレオタイプの女』が動き始めたのっていつ頃のことですか?
黒沢 簡単な経緯をいうと、『トウキョウソナタ』(08年)のあとぐらいだったと思いますが、フランスで映画を1本撮りませんか、それに適した企画はありませんか、というオファーを吉武美知子さん(プロデューサー)からいただいたんです。その時に思い出したのが15年前くらいにイギリスのプロデューサーから依頼されて書いたプロットでした。それはイギリスを舞台にしたホラーの企画だったんですが、残念ながらその話はなくなってしまった。舞台はイギリスということになっていますけども、まあ日本では無理だとしても場所はどこでもいけそうだったので、こんなのがありますと見せたのが『ダゲレオタイプの女』の元になったプロットです。
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