世界各国の音楽を発掘・収集するユニットSoi48が、微笑みの国=タイの表と裏を見せてくれる連載「微笑みの裏側」第10回目です。前回のケーンに続き今回はピンバンドについて紹介してくれています。空族最新作『バンコクナイツ』に出演もしたクン・ナリンズ・エレクトリック・ピン・バンドとの出会い、その魅力について。





文・写真=Soi48

今回は空族最新作『バンコクナイツ』で話題騒然のピンバンドことクン・ナリンズ・エレクトリック・ピン・バンドについて書きたいと思う。ベトナム戦争時、タイのイサーン地方に米軍が駐在しギター、ベース、ドラムといった西欧楽器が伝わり、ラジオ、テレビなどで欧米のポップスが聴かれるようになった。そんな中、西欧の楽器を取り入れながらも欧米音楽を真似るのではなく、新しいイサーン音楽を作り出すことを目指した者がいた。日本人である我々に衝撃を与えたクン・ナリンズ・エレクトリック・ピン・バンドのルーツはここにある。その歴史を今回紹介していきたいと思う。

クン・ナリンズ・エレクトリック・ピン・バンド。彼らをはじめて知ったのは、2011年の春、深夜の暇つぶしにモーラム歌手やバンドの映像をYouTubeで検索している時だった。この時期韓国サムソン社の携帯電話がもの凄い勢いで東南アジアに流入していた。今まで携帯電話を持っていなかった人、自宅にパソコンを持っていなかった人が大量にインターネットの世界に飛び込んだ時期であった。レコードの売買、ライブコンサートの告知、バス・航空券の予約など日本と同様のシステムがあっという間に出来上がっていった。そんな時代だから現地に住んでいるタイ人が大量に音楽動画をアップしはじめた。ここで勘違いしてはならないのは最初彼らは海外の音楽ファンを意識したり、音楽マーケットを意識した宣伝として戦略的に動画を作成したわけではなく、なんとなく新しい技術を使って楽しみながら音楽をアップしていたということである。バンドや歌手自ら撮ったものもあればファンが地元のコンサートやお祭りの様子をアップしたものもある。タイ人がアップしているので動画のタイトルはタイ語だが、タイ語を打ち込んだり、関連動画を観たり、気になる単語をコピペして検索すれば旅行をしないでも様々なローカルな音楽に出会える時代が始まったのだ。

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四方八方に向けられた拡声器を耕運機に備え付けた巨大なサウンドシステムを使用し、バイク・タクシーのベストを着たピンとベース、打楽器隊の計7人が爆音で演奏しパレードしている。移動式サウンドシステムに群がり、手をくねらせながら楽しそうに踊る人々の姿はまるでテクノのレイブ・パーティーの様だった。彼らの音楽は"ピン・プラユック”と呼ばれるピンが主役のスタイルで、仏教儀式や冠婚葬祭に呼ばれる地元密着型の楽団であり、ステージでショーをやるバンドとは異なるとわかった。住んでいる地元民には何気ない音楽でも、コンサートをしていないので行って観れる訳ではない。彼らを観たかったら仏教儀式や冠婚葬祭の行事に紛れ込むしかないのだ。 どうしても彼らの音を生で体験してみたい。YouTubeのアカウントから問い合わせて、出家儀式に紛れ込ませてもらうことにした。

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