新作『バンコクナイツ』のためタイに潜入した空族による極秘レポート「潜行一千里」。撮影終了後の6月、部隊は再びラオスに向かいます。目的地は長年その存在を隠蔽されてきた、かつてのCIAの秘密基地、モン族特殊部隊の本拠地が置かれていたロンチェンです。ラオス軍から派遣された若い2人の兵士に付き添われ、約10時間かけてついに到着したその場所にはどんな光景が広がっていたのでしょうか。

現在のロンチェン。中央奥にはかつての滑走路が見える


文・写真=空族


仏歴2559年6月×日

 物々しいゲートは我々に対して開かれていた。ゲートの歩哨に立つ若い兵士と車内の若い兵士同士、すれ違いざま、ほんとうはすぐにでもふざけ合いたいのを堪え敬礼しあっているのが、互いに噛み殺した笑みから分かる。もしそれでも今、ここロンチェンを攻めるとなれば相応の部隊と覚悟を要するだろう。但し、今現在がそこまでひっ迫した情勢でないことは、彼らの表情からもわかる。ラオスの首都ヴィエンチャンを出発してから10時間以上をかけ、中部山岳地帯ど真ん中、サイソンブン県ロンチェン、かつてのCIA秘密軍事基地"リマサイト98”にようやく到着した。ここは、1960年代後半には4万人が暮らす当時のラオスでは2番目の都市だったが、遂に一度も地図に載ることはなかった。もちろん、その住民のほとんどはバン・パオ将軍旗下のモン族たちであった。そもそも、それ以前は住む人もない海抜900メートルの寒く霧の濃い谷だったそうだ。そして最後は北ベトナムを主力とする部隊に包囲、攻め落とされ、戦後はラオス政府によって厳重に管理されてきた。「世界で最も秘密の場所」と呼ばれたロンチェンは現在、一見すると只の寒村である。この村唯一と思われる宿泊施設の中庭に2台の四駆が滑り込んだ。庭を円で囲むように簡素な部屋が5棟並んでいる。各部屋に2人ずつ収まり荷をほどいていると、さっそくリラックスした普段着に着替えた若い兵士2人が中庭に出て笑いあっている。さっきまでの厳しい表情とは打って変わって、こちらの緊張までとかれた心地になる。ロンチェンに到着したことで、彼らの道中警護の任は一旦解かれたのだろう。気安い態度が許されそうな雰囲気にわたしは思わずふたりに近寄っていった。後輩兵士の方がひとなつこい笑顔で笑いかけてくれる。名前はユイ。わたしがここまで無事に到着できたことの礼を拙いラオス語で伝えると、横で聞いていた先輩兵士ノイもようやく微笑んでくれ、グラスを傾けるジェスチャーで応えてくれる。後輩ユイが後でご飯を食べながらねと付け足し、ふたりは庭を出ていった。ん? AKは部屋に置きっぱなし…? 鍵などあってないような部屋だが…。ふたりの背中をみつめていたわたしの気持ちを察するかのように、後ろから声が聞こえてくる。

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