ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの著書『映画は頭を解放する』(勁草書房)やインタヴュー集『ファスビンダー、ファスビンダーを語る』(2013年に第1巻、2015年に第2・3巻(合本)発行)の訳者・解説者である明石政紀さんが、ファスビンダーの映画作品について考察していく連載「ファスビンダーの映画世界」。今回からは1969年に製作、1970年に公開された長編第三作『悪の神々』について見ていきます。 前回(其の五)取り上げた長編第一作『愛は死より冷酷』の続編とも言えるギャング映画ですが、"白の映画”であった『愛は死より冷酷』に対してこちらは……
文=明石政紀
ファスビンダーのギャング映画三部作、其の二
『悪の神々 Götter der Pest』(其の一)
「『愛は死より冷酷』、『悪の神々』、『リオ・ダス・モルテス』は(・・・)より的確な自分の描写だと思っています。こうした映画じゃ、どの登場人物もぼくの一部だと言っていいでしょう」[*1]
「フランツは出所し、ヨアナは酒場で歌っている。ふたりはまた一緒になる。だがフランツは長かった刑期のせいで過敏になり、ヨアナを捨てる。彼女が自分を所有しようとしていると感じたからだ。フランツは旧友ギュンターを見つけ、一緒に"悪事”を働こうとする。そんなときフランツはマルガレーテと出会う。ごくふつうの女の子で、彼女はなんの要求も掲げない・・・。
フランツとギュンターは強盗をくわだて、ヨアナがそれを探りだす。ヨアナはフランツと別れるくらいなら彼に死んでもらいたいと考え、関係を持った警官にフランツを射殺してくれるように頼む。マルガレーテも警察に通報する。フランツとギュンターはこのくわだてで死ぬ。ヨアナとマルガレーテは墓の前に立ち、ヨアナは泣きながら"あの人をこんなに愛していた”と言う」(ファスビンダーによる『悪の神々』のあらすじ) [*2]
2018年12月号
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