boidマガジン

2016年10月号 vol.3

空族・富田克也 インタヴュー 前編

2016年10月23日 13:18 by boid
『サウダーヂ』から5年。甲府からスコップで穴を掘り続ければブラジルで、途中でちょっと曲がればタイ。そんな主人公の発言を真に受けたわけではないが、この間空族はタイと日本を行ったり来たり、監督・富田克也はほとんどタイに滞在と言っていいほどの長期にわたる準備を経て、ついに『バンコクナイツ』が完成した。
完成後は8月にロカルノ国際映画祭でワールドプレミア、そして9月24日に山口にて日本プレミア、翌週には渋谷WWW Xで東京プレミア上映が行われた。その評判はさまざまなメディアを通じ、すでに目にされているのではないかと思う。今年はじめ、撮影終了直後に行った相澤虎之助インタヴューに続く今回は、撮影から仕上げまでの様子と今後の展望を富田克也監督に語ってもらった。




他人の力を借りる~『バンコクナイツ』監督・富田克也インタヴュー


取材・構成=樋口泰人
写真:山口貴裕


タニヤ通りの撮影

本当は昨年(2015年)12月末できれいに終わる予定だったんですよ。それが最後の山場のタニヤ通りの撮影で手こずりまして。タニヤ通りは、boidマガジン連載の「潜行一千里」を読んでもらえばわかるように風俗街なので、普通には撮影することができない場所なんですよ。しかもあそこは私道で、とはいえ警察の許可がないと撮影できず、という。どうしたらいいかいろいろ考えたんですが、結局は正面から警察署に申請を出してみたんです。そしたらあっさり申請が通った。ただ「僕たちの許可が取れただけじゃだめだからね」(笑)というふうなことも警察から言われ、その私道の大元の大元を口説き落とすことが必要になり、で、そこに行くと今度は「各お店の人たちがウンと言わないと」ということにもなり……。やっぱ、そうは問屋が卸さないっすよね~と。

タニヤは200メートルくらいの通りで、その両脇のビルにびっしりお店が入ってるんですけど、さすがに通り全部を使って大々的に撮影するのはいくらなんでも無理だろうということもわかっていたので、4年間通い続けて何とかなじみになったエリアを中心にして撮影することにしたんです。でもちょっとやらかしてしまって。そこまで気が回らなかった…ってとこなんですけど。それからしばらくタニヤに近づくだけでもまずいことになると警告されまして。宿で悶々と、いじいじする時間がしばらく続きました。さすがにあの時は落ちてましたね、みんな。店内の撮影に使わせてもらったお店とは、社長含め、チーママたちや女の子たち、その他のスタッフのみんなとも、かなりいい感じに信頼関係ができていたし。今思えば、4年という年月が逆に油断を作ってしまったってことだったなぁ、と。店内のシーンは全部撮り終えていて、いよいよ通りの外、大一番ってとこまできて、もういいだろうイケるだろうと、だいぶ整ったろうと思って決行したら、横やりが入ったんですよ。撮影当日、なるべく目立たないように、機材や荷物はビルの陰に隠すように降ろしたりして気を使い、いつもの雰囲気でサラリといけるかな~なんて思いつつ、通りのなじみの人々も、いよいよか!みたいな感じで集まってきたその矢先、タイ側のプロデューサーのウィットさん(出演もしている)が、「はやく逃げてください! ここに警察が15人向かってます!」って(笑)。あれ? 許可もらってるんじゃなかったっけ? 「いいから早く逃げて!」みたいな(笑)。
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