梅田哲也さんの連載「ほとんど事故」の21回目です。年末から年明けにかけて日本、海外で訪れた街と人の息づきについて。ひとりで移動しているなかで見えてくる風景、どこにでもあるコンビニエンスストアの存在、他者と入れ違ってしまっても成立するような状況にも思いを馳せます。見知らぬ街であっても、どこにいても感じることとは…。



文=梅田哲也
写真=西光祐輔

病室には、いろんな人のCDや本が未開封のまま平積みになっている。その傍ら、一話完結の料理漫画がページの途中で伏せられている。なんかわかる気がするなあ。ちゃんと聞きたいから聞けない、ちゃんと読みたいからこそ読めない。強い作品にはときどきアタることがあるから、病気で弱った身ではなかなか咀嚼しづらいのか。それは言葉もおなじで、どうでもいい挨拶には返事することができても、真面目な文章には口を閉ざしてしまう。彼がここに入院することを決めてからほぼ毎日撮って送っているどうでもいい写真には、ときどき同じくらいどうでもいいコメントが返ってきていた。ルーゼ、ルーゼ、yet、宇宙飛行士が乗っています、無重力、ハナクソだわい! 彼がすわった車いすを押して近所のローソンまでスポーツ新聞を買いに行く。ここのローソンなかなか品揃えがいいねんで。たぶんそんなことない、いたって普通のローソンなんだけど、病気をきっかけにコンビニが他のどこよりバリアフリーであること気付いてしまうという、これはこれでよくある話かもしれない

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