文・記録=ヒスロム
4月2日(日) 晴れ
六年前の冬か春、とにかく寒い日。むちゃ面白い場所見つけたから遊びに行こうよ、と友人のこうたくんを現場に誘った。このころはまだむき出しの土や岩がごろごろしていて圧倒的に謎だらけの現場を一緒に散歩した。歩いていると地面から飛び出たびよびよのデカいパイプがいたるところにぽこぽこ出ていて。このパイプは一体なんなのか、どれくらい深くまで続いているのか。謎すぎて、そのへんに転がっている石を投げてみると変な動きと音で答えてくれた。投げ入れた石はパイプに食べられてたくさん楽しい音をだすけど、さっきの石は一体どこにいくんだろ。このパイプの下どうなってんのだろうか?入ってみる?現場の一番てっぺんにやばいパイプがあるからってこうたくんを案内した。どこまでも続いていきそうな地平線に空と街の明かりが浮いている。それをバックに地面から飛び出た二本のパイプに石を入れる。ぴよぴよぴよぴよ、ぽよよーんって優しくもおかしな音が響いた。
こうたくんには息子が二人できて、次男のあらたくんは今年二才になった。どこで覚えたか、こてこての関西弁をゆうちょうに話す男の子。植物に興味があるみたいでキレイな草や枝なんかを集めてはみんなにあげている。あれからびよびよのデカいパイプたちは少しずつ姿を消していったけど、一番お気に入りのてっぺんにある二本のパイプは未だ地面から飛び出ていた。不思議なことに石を入れすぎて何度も詰まっては音が出なくなっても時間が経つといつの間にか復活している。このパイプすごいからこの石落としてみて!っておしえるとパイプからの音があらたくんの体中を通って、くしゃくしゃの笑顔と言葉にならない声で返してくれた。不思議なことにそれは昔こうたくんが見せてくれた反応とそっくりで頭がぐらついた。時間が歪む。それは波みたいなものなのだろうか。人間が受け継ぐ遺伝もそうなのだろうか。砂を落とせば、葉っぱを落とせば、また違う反応があらたくんの表情と声と動きで返ってくる。

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