boidマガジン

2017年08月号 vol.4

ほとんど事故 第34回 (梅田哲也)

2017年09月29日 16:40 by boid

梅田哲也さんによる「ほとんど事故」第34回目です。札幌での展覧会がオープンして数日後。田舎の友人から届いたメールと、小さな漁港の花火大会に触発されて、一人で作業をする会場にて行われた「お盆の儀式」での出来事の前編です。




文・写真=梅田哲也


表の会場からなんらか人や生き物の気配を感じるのはまあそういうふうにつくった展示だから仕方ないわけで、おや、とおもってもよっぽどのことでない限りわざわざドアを開けて表に出ていくようなことはせずに、裏の搬入口前に置いてある作業机で、インストールしておきたい作品の準備をしていた。これは自分勝手な儀式のようなことで、なんとしても今日中に終わらせないといけなかった。表からはいろいろな音がきこえている。音色というのは音のバリエーションというか、種類の豊富さ、幅の広さなどそれぞれに気を配っているせいもあって、ときどき、あれ、今までこんな音してたっけ、なんてその出所を探して会場をウロウロしていると、思いもよらないところで空間に吸い寄せられたり弾かれたりしながら、かたちを変えて存在している、今まで知りもしなかったその音が。そもそも気配なんてのは、ほとんどが音に起因することだろう。ラップ現象とかポルターガイストとよばれる事象にも、多分に音が関係している。聞こえない音を感じてしまったときに、人はこれをそう呼んだりする

そういえば展覧会初日の内覧会のときに、ある人がポルターガイストという言葉を残して帰ったんだった。興味深いのは、ポルターガイスト=怪奇現象と、この作品(わからないものたち)の構造が対極にあるということ。対極にあるにも関わらず、そう感じる人がいるということ。たとえば、ドアがかってに開いたり閉まったりすることが、ポルターガイストのひとつであるとしましょう。今回の僕の展示にも、かってに閉まるドアが2カ所ありますが、かってに閉まるのは、ドアの先に紐がくっついていて、その先に重石が吊ってあるからです。つまり、重力で引っぱられて、ドアが閉まる。これに、わっ、と驚く人がいるのです。なんてことない原理だし、そもそも重石が下がってドアを引っぱる様子がはっきりとみえているので、ポルターガイストでもなんでもない。それなのに、驚く人がいる。一方で、コンビニやスーパーに行くと、自動で開いて閉まるドアがありますが、こちらは誰も驚いたりしません。この手の自動ドアは赤外線やマイクロ波の反射で人が通過することを感知して開いたり閉まったりしているはずだけど、赤外線もマイクロ波も、目には見えないし、耳で聞くこともできない。つまり存在を認識できない、原理を確認できないなので、ほんとうはポルターガイストなのかもしれない

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