boidマガジン

2016年12月号 vol.2

樋口泰人の妄想映画日記 その21

2017年11月02日 16:37 by boid

boid社長・樋口泰人による業務日誌ときどき映画&妄想日記。今回は甲府や松本にある映画館とイヴェントスペースや『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』(リチャード・リンクレイター監督)のこと、いよいよ佳境に入ってきた『PARKS パークス』(瀬田なつき監督)の宣伝活動などについて記された11月中旬の日記をお届けします。



文・写真=樋口泰人


 福岡、新千歳の爆音が終わって11月12月は少し落ち着くはずだったのだが、全然そんなことはなかった。東京にいたらいたでやること満載。みんなどうして映画を観たり飲みにいったりライヴに行ったりできるのだろうか? まったくわからない。昼から朝まで働いて、休日ほぼなし。なんてことを言ったり書いたりするのは単に自分の仕事能力の無さを言いふらしているだけだと思え、耳鳴りはより激しくなり、鬱もひどくなる。だが言ったり書いたりすることは鬱のリハビリでもあるのだから致し方なし。まあ、これ以上ひどくならないために何をするか、みたいなことでしかないのだが。


11月11日(金)
甲府へ。桜座にて土・日で行う空族の『バンコクナイツ』イヴェントの準備。『地獄の黙示録』の上映もするので、せっかくなので爆音にできないかという試み。かつての並木座や歌舞伎町東映(だったか日活だったか)みたいに、柱が客席の中にあるので、スクリーンをちゃんとみられる位置が限られていて、さすがに上映環境としては十分ではない。スクリーンの大きさも限られる。だがこの空間。最近の映画館は基本的に壁が反響しないように、吸音材を貼り付けまくっていて、スピーカーから出る音がストレートに聞こえる構造になっていて、その分映画館独自の音、いわゆる箱鳴りが消える。つまり制作者たちが意図した音ができる限りそれに近い形に届けられる仕組みになっている。デジタル化による中央管理システムは音の面でもはっきりとかたちにあらわれているのだが、つまり映画館のコンビニポスレジ化がはっきりと形になっていて、その吸音された人工的な静けさに耐えられなくなる。YCAMの爆音ではそんな音のストレートな到来を微妙に揺らすため、天井やら座席下やらにスピーカーを入れて、かき回し、音の渦を作っている。もちろんそんなことをしなくても、桜座のような場所に来れば自然に音が揺れる。『地獄の黙示録』は2チャンネルのステレオ・ヴァージョンで。ライヴハウスで5.1チャンネルは機材を入れないとならないので無理。久々の2チャンネル仕様で、会場の音のおかげもあって懐かしく柔らかな音になった。戦闘シーンであっても、常に緩やかに流れる川を遡り続けている、今ここにはいない誰かとしてそこにいる感情と体験を、主人公と共有しつつ旅を続ける。それはそのまま『バンコクナイツ』へとつながっていく。

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