
4月6日、桜満開の石神井公園
男の子女の子
文・写真=風元正
3月17日、桃井原っぱ公園で開かれた西荻ラバーズフェス2017に出演した井手健介と母船の演奏を聴いてきた。当日は晴れていたが、はっきりと空気が黄色い砂嵐の一日で、かなり厳しめな状況だった。しかし、井手くんたちは大健闘。まず、リハの途中で歌ったナゾの日本語訳イエスタディ・ワンスモアが一気に野天の会場を暖めた。肌寒いので、音を出してもすぐ冷える。その問題を、ロック魂が爆発するプレイで見事にカヴァーした。
ワイルドな井手のギターのカッティングや、打楽器と化した石坂智子のピアノ。強力なリズムセクションとともに低音が腹に響き、普段より「男の子」に聴こえる。「おてもやん・イサーン」でタイ音楽の洗礼を受けたのがよかったかもしれない。打順は忘れたが、「一番センター(?)、おてもやん」から「四番サード、おてもやん」まで順番にコールしてゆく箇所では大笑いした。

西荻ラバーズフェスに出演した井手健介
お祭りなので、小さな子供も来ていたが、みんな楽しそうで、踊り出しそうな子もいた。もちろん、ビートの効いた「人間になりたい」を聴いても、泣き出したりしない。もともと同じ曲を爆音で演奏していたという出自を思い出し、これならギター一本で野外でもやれる、という頼もしさを感じた。
「ゴジラ」をオーケストラ演奏で観る、という形で伊福部昭の曲を聴いて以来、20世紀音楽の方向性は、あらゆる楽器を打楽器として使う、というスタイルにあると考えている。ヴァイオリンもヴィオラも叩く。もちろん、ギターだって打楽器。強烈なリズムだけが世界を変容させることができる。伊福部は自分の音楽が認められるようになった理由について、「みんなロックを聴くようになったから」と語っていたという。21世紀は芸術のジャンル分けが消え、ひたすら「野生」が要求される時代になる。カッコいい女ドラマーも増えてきたし、女性たちはどんどん自分たちのリズムを獲得してゆく流れにある。「男の子」たちも頑張らなければ。
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